六華(スキップビート二次小説)

スキビ小説が書きたくなって開きました。いつか雪のように無くなります

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きらきらひかる 22

まだ暗い朝と夜が入り交じる曖昧な時間に、まるで自分のようだと自嘲した。
過去の記憶もろくに持たず、誰かに怯え、保津周平にも敦賀蓮にもなりきれない。
「…だから言えないのか」
どんな仕事をしているかなんて意味がない。確かな物なんて持っていないのに、彼女に自分の事を話せる訳がない。よくアイツに何でも答えると言えたなと、自分でも呆れてしまう。
目の前にあるのは彼女の部屋のドア。
こんな時間に訪れても会え無いのは分かっていたのに、来ずにいられなかった。
「…最上さん」
眠っているだろう彼女との距離を少しでも縮めたくて、ドアに近付いて。
全てを知ったら、俺はまた忘れてしまうのだろうか
彼女との時間も
唯一確かだと思う、この気持ちも
その時君はどうするんだろう
自分にさえ向き合えない俺に怒って
呆れて
今度こそ本当に、終わりにするのか…
「…………痛!」
「え?やだ保津さん!?大丈夫ですか!?」
いきなり開いたドアに額を打ち思わず踞りそうになった俺に、出てきた最上さんが慌てて声を掛ける。
「…大丈夫。それより、どうした?こんな時間に何処へ行くの?」
「ね…め、目が覚めちゃったので、ええと、美容と健康の為に散歩でもしようと。保津さんこそこんな時間にどうしたんですか?」
「…会いたくなって、つい」
俺の言葉にぱっと頬を染め目を游がせたのが彼女の気持ちを表しているようで、心が温かくなる。
「じゃ、一緒に行きますか?」
「…うん」
本当に、何時までも一緒に行けたなら。



テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2015/12/05(土) 12:20:21|
  2. きらきらひかる
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きらきらひかる 21

社さんとスケジュールの確認をした後、着替える為に椅子から立ち上がった俺の目に入ったのは鏡に映る"敦賀蓮"の自分。
「…もう少し、気を付けるべきですよね」
先日久しぶりに怒られて、出会った頃散々貰っていたお小言が最近無いのに気が付いた。良いように解釈すれば恋人として合格点を貰っているのだろうけど、何時減点されてもおかしくない俺としては出来るだけマイナス要素を取り除いておきたい。一番手っ取り早いのが服装で、彼女が注文を付けた事は無いけれど変えたからと文句を言う事も無いだろう。
「彼女と二人きりの時なら何も困る事無いんじゃないか」
間違ってはいないけど、社さんは俺から出る全ての言葉を最上さんに繋げたがるから困る。
「…彼女相手だから困るし構うんじゃないですか」
「なんで?反応が薄い前よりいいじゃないか。ずっと保津周平で気を張っているんだから、彼女の前でくらい息抜きしろよ」
噛み合わない内容と何処か上の空な返事に鏡越しに見た社さんは、俺に背を向け携帯のメールをチェックをしている。
「今の"いい方に変わった"お前が本当のお前で敦賀蓮なら、彼女にまで隠す必要なんて無いたろ?前に聞いた話からすると彼がモデルだと言いふらすような娘じゃないみたいだし」
「…隠す」
そう、俺は敦賀蓮を隠していた。
保津周平の姿で、気配を殺して。
今まで利用されていたのはモデルという仕事と、それに付随する物だろうと漠然と思って…思い込んでいたから。
しかし"別の所に理由がある"なら
俺は敦賀蓮を隠していたのではなく
"誰か"から隠れているんじゃないか?
誰とどう過ごしたかは覚えていないが、最上さんと会う前、俺に気付いて付き合った女が何人かいた事は覚えている。
その"誰か"でなければいいから、その女達と付き合う事が出来たんじゃないか?
その"誰か"は、きっと


あの女







テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2015/11/25(水) 08:25:52|
  2. きらきらひかる
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きらきらひかる 20

その開かれたページに思わず釘付けになってしまった。
「ね、保津さんに似てるでしょ?」
私には写真の中の、高級感溢れる服を違和感なく着こなすこの人が本人にしか見えないんですが。
前髪を上げた彼の姿は何人かの目に止まり瞬く間に噂となった。捕まらない当人ではなく私の所へと噂の真相を確かめに来る人の興味津々な表情と質問が嫌で警戒していたのに、いきなり目の前に差し出されたその洋雑誌に逃げるタイミングを失ってしまった。
「こ、この人は」
「敦賀蓮。日本人で初めて、唯一アルマンディと契約したモデルなの。アルマンディ知らない?イタリアの老舗ブランドでメンズファッションで有名なの。でも日本ではバッグとか靴のイメージが強いせいか雑誌にスーツの広告が載る事はあまり無くて、蓮を知っている人は少ないけど海外では外国人負けしない体格とマスクで人気があって…」
"客寄せ"
"着たり脱いだり"
"たまに色々要求される"
「へ、へぇぇぇぇぇそぉぉぉなんですかぁぁ……………って、噂?」
彼女が熱をもって延々と話す内容は私の耳を右から左へと流れていたのに、その言葉だけが引っ掛かった。
「マネージャーが目の前で自殺したからって」
「じさ………っ!?」
「デビュー当時は日本でも活動してたのに、今海外向けの仕事だけしているのは当時の女マネージャーが目の前で自殺したからって噂が流れているの。それにショックを受けて何年も休んで、もう復帰は無理だろうと言われてて…所属する事務所を変えて復帰しても海外の仕事ばかりしているのはそのせいだって」
「な、何で、自殺なんか」
「さぁ?ネットでは金銭のトラブルとか恋愛の縺れとかって書かれてるわ。恋愛なんて…デビューは中学生の時って話だからかなり年が離れていた筈なのに、ねぇ?」
話すのを憚るような内容を何でも知っているとばかりに自慢気に、そして嬉しげに話すのに、ざわっと鳥肌が立った。
「ね、彼、紹介してよ」
「な、何故?」
「いいじゃない、私ファンなの。載っている雑誌、持っている小物、蓮に少しでも繋がる物は全て手に入れたい程凄く好きなの。こんな小さな雑誌の中ではなく何時も、直ぐ近くでその顔を見ていたいの。だから紹介してよ、愛しているなら分かるよね?」
「や、そのツルナントカさんじゃないですし、人と関わるのが苦手な人なので」
「本人なんでしょ?知らないふりして、独り占めする気?ああ、他人だと言い張るならそれでいいから、紹介してよ。他人なら出来るでしょ?」
ぐっと私の腕を掴んだ彼女が話を全然聞いていないのにも目が笑っていないのにも怖くなり、振りほどいて逃げるようにその場を離れる。
疑問には思ってた。
無理をして背筋を伸ばしてる様子がないから、わざと丸めてたんじゃないかって。眼鏡だって、あの時落としたにも関わらず足取りが迷う事はなかったから本当は必要ないじゃないかって。
そして
七倉美森とどう過ごしたか覚えていないと、私達が付き合う事になった切っ掛けを必死に考えていたのが嘘だとは思えない。
もしかして仕事についてはっきり言わない理由は、ううん、それ以前に、保津さんが人と関わろうとしないのは、感情がぺらぺらになって覚えていられなくなったのは
過去忘れたい、本当に忘れてしまうような何かがあったんじゃ
「って、だからあの人が保津さんだと決まった訳じゃないし!」
何度声に出して否定してみても"もしかしたら"は頭から離れない。
他人から落とされた影は、私の心に何時までも残った。




テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2015/11/23(月) 08:13:44|
  2. きらきらひかる
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きらきらひかる 19

渡された契約書に目を通し、撮影日程と受けなければいけない講義を頭の中で照らし合わせる。
「レポートの資料ですか?」
「いや、仕事の。ごめん…また忙しくなりそう」
「ああ…気にしないで下さい。でも大変ですねぇ。子どもは力加減知らないから気を付けて下さいね?それと水分はちゃんと採らなきゃ駄目ですよ?」
あやふやな言葉だけで俺の仕事を確定したらしい最上さんから同情の目を向けられて苦笑してしまう。
「本当に辛いなら、無理をしてでも辞めた方がいいんじゃないですか?」
「…迷うって事は、結局好きなんだっけ」
「と、私は思っているんですが。ああ、そう!好きな所と嫌な所を上げてみるといいです!嫌しか思い付かなかったら辞めればいいんですよ!」
はい、と机の向こう側から出された紙とペンを受けった俺に怪訝そうな顔をする。
「何でそんなに困ってるんですか?」
「いや…嫌な原因が違う所にあるような気がして…」
「気がして?」
俺の記憶は曖昧で忘れてしまった事の方が多い。それでも利用されたという嫌悪感だけは残っていて…それは今までこの仕事のせいだと思っていたけれど…何か違う気がする。
もしかしたら…忘れた何かに、原因が
「保津さん、これ!」
俺が考え込んでいる間に何か書いてたらしい紙を机の彼女が笑顔で差し出す。
「熱中症に掛からない為の注意点と、掛かった時の対処法です!」
「…ありがとう」
"恋人"になっても、相変わらず"少し側に居てくれればいい"らしい最上さんは、俺を利用しようとは決して考えないと思うのに、それでも口に出来ないのも、きっと……
「どうしたんですか?」
「……………海」
「へ?」
「夏が終わるのに、行けそうもないなって…ごめん」
「無理をしてもらってまで行きたい訳ではないので、気にする必要なんて無いですよ?」
「そう?本当は凄く行きたいんじゃない?俺は何時休みが取れるか分からないから、ほら、あの髪の長い、よく一緒にいる人…」
「モー子さん?」
「もーこさん?…その不思議な名前の人と一緒に行けば………っ!」
不安を誤魔化そうと言った言葉に、派手な音を立てて俺の顔を両手で挟んだ最上さんの怒った顔が近づき一瞬痛みを忘れた。
「保津さんと約束したんだから、一緒じゃなきゃ意味が無いでしょう!?」
「ご、ごめん」
「何時でもいいんです!来年でも再来年でも、海は逃げませんから!絶対保津さんと一緒に行きます!覚えてて下さいよ!」
ああもう。
何時もそうやって君は俺を変えようとするんだから。
自覚が無いから質が悪い。




テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2015/11/14(土) 18:23:20|
  2. きらきらひかる
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きらきらひかる 18

「保津さん」
掛けた声に立ち止まった彼が、長い溜め息を付いたのが肩で分かった。
「今まで、ありがとうございました。全て終わりましたので、もう無理して恋人らしくして頂く必要はありません」
「無理して?」
もう振り向いてもくれない。
「 始め話した通り、気が済んだから終わりです。ごめんなさい、好きでも無いのに恋人のように振る舞うのは大変だったでしょう?」
「…気が済んだ?」
目を合わせて話てもくれない。
「はい、保津さんが"ぎゃふん"と言わせてくれたので」
最後に振り向いてくれるなら
別た後も記憶の隅で、もし覚えていてくれるなら
怒っている私でも泣いている私でもなく、笑っている私がいい。
「…余計な事したかと思ったんだけど」
その言葉に、作ろうとした笑顔は中途半端な形で固まってしまった。
「余計な事?」
「よりを戻したかったんじゃ」
「はぁ!?何でそんな話になるんですか!?」
どう考えれば、そんな事に!?
「携帯に出なかったのは、どんな形でももう一度と思ったから邪魔されたくなかったんじゃない? 」
「違います!出なかったのは、あの、その」
「大体俺と付き合い出した理由からして」
「確かに保津さんと付き合い出した理由はアイツが来る事が目的だったんですが、やっぱりお前が一番だと言って欲しいのかと考えた時何か違う気がしたんです!」
「それが何?」
「分かったんです、違う気がした時点でもう気持ちはなかったんだって!本当に好きなら何があっても、別れても気持ちは変わらない筈だって!」
「…そして俺の事も終わったら霞となって忘れるんだ… 」
「忘れるのは保津さんでしょう!?私は絶対…」
霞となって?何処かで聞いた言葉?じゃなくて、私が
「絶対?」
「…保津さん、何処から聞こえてました?」
「"アンタとの事なんか霞となって忘れきってしまう位、誰よりも好きで誰よりも一緒にいたい人よ"だけ。それは誰の事?」
「いやーーーー!何でそこがピンポイントで聞こえちゃうんですか!?や、でも、だからって、私のせいでこんな酷い目に遭ってしまったのに、もう保津さんを無理矢理付き合わせる訳には」
「俺の事…なんだ」
「いえ!ちがっ………ちがっ………わ、な………………ィ…デス……ヶ……ド…………」
「"ふり"ではなく俺と同じ気持ちだったと、信じていい?」
「え?」
今、何て?同じ気持ち?
保津さんも、私と一緒にいたいと思ってくれたの?
側に居てくれるだけで嬉しくて、何処に行っても楽しくて、何があっても安心出来るって、そう思ってくれるの?
「最上さんはどう過ごしたか覚えている"彼女"で、ずっと側にいたい"恋人"だから…俺を変えてしまった責任をとって」
やっと振り向いてくれた保津さんが凄く真剣に、真っ直ぐ見るから、凄く恥ずかしくなって今度は私が俯いて顔を反らせてしまった。
「い、いいんですか?私狡くて我が儘な女ですよ?」
「そう?怒りっぽいのは知っていたけど…ああ、蹴っ飛ばすのは俺だけにして?さっきみたいな、寿命が縮むような思いは二度と御免だから」
また出そうになった足の代わりに額をその胸に押し付けて。
初めて見る笑顔の保津さんは、逃げる事なく受け止めてくれた。


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  1. 2015/09/23(水) 10:15:06|
  2. きらきらひかる
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