六華(スキップビート二次小説)

スキビ小説が書きたくなって開きました。いつか雪のように無くなります

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Card of cups 16

キョーコの靴が無い閑散とした玄関で、蓮は気持ちを落ち着かせようと暫く目を閉じてから、ゆっくりと靴を脱ぐ。
…買い物へ行っているだけ、そう、出て行く時はちゃんと挨拶すると言っていた…
"何故夜遅くに"という疑問の答えは容易に想像がつく。
地下にあるスーパーの客はマンションの住人だけではない。自分の帰りは何時ももっと遅いからこの時間に買い物へ行っても夕食の準備は出来るからと、外から来る僅かな人の目を気にして敢えて客の少ない時間を選んでいるのだろう。
それでも不安になるのは、同時に気付いた"自分の知らない間に部屋を出て行く事も出来る"という、あの時早く帰らなければ知らなかった事実からか。
『みっともない』
キョーコの言葉を思いだし、確かにそうだと苦笑する。気が変わっていないかと服もまともに着ないまま慌てて出てきた姿だけではなく、 あの時だけでも、 今だけの話でもなく。
恋人のふりをしようと言った時も、恋人に別れを告げられた後、彼女にあの笑顔を求めた時も…キョーコに黙ってホテルをキャンセルした事も。何時かは必ずその時が来ると理解しながら、子どものような我が儘で理由も分からず引き留めて…
とりとめがない思考と未だ落ち着かない気持ちにコーヒーでも飲もうとキッチンへ入り、ふと違和感に襲われる。何時もと変わらないのに何かおかしいのだろうと思いながら食器棚に手を伸ばし…その正体に気が付いた。
何時もと、キョーコが来る"以前"と変わらない
キッチンは毎日使っているのかと疑いたく程綺麗で、棚には有るとばかり思っていたキョーコのと言えるカップが無い。よくよく思い返せばどの場所でもキョーコの私物を見た覚えが無い。唯一リビングにあったあの雑誌はいつの間にか消えている。一度入ったキョーコの部屋でさえ、直ぐ…今出ていったと言ってもおかしくない状態だった。
…引き留められるのが嫌で、挨拶を後にしたなら
ホテル?一時身を寄せていた友人の家?それとも…新しい部屋?
思わず飛び出そうとした玄関先で何も知らない事に気付き、呆然と立ち竦む。
携帯に連絡してもキョーコが出なければ探し出す事も手掛かりを掴む事も出来ない。
自分の知らない場所から先の、最上キョーコ。
真面目で頑張り屋な性格だけで繋がっている仕事上の、上辺だけの関係では決して見せないだろう、知る事が出来ない世界…
…だから会いたいと、声が聞きたいと思うのか
見つめるだけしかないドアが開き、入って来たキョーコが蓮の姿に一瞬驚いた後、笑顔になる。
「おかえりなさい敦賀さん。ごめんなさい、今すぐ夕飯の準備をしますから」
「…行こう」
「はい?」
「最上さんのカップを買いにいこう」
ぽかんとするキョーコから素早く持っていた荷物を取り玄関へ置くと、そのまま手を引き今入って来たばかりドアを出て、廊下の先にあるエレベーターに乗る。
「下のスーパー、食器も売ってるよね?」
「う、売っていますけど、いくら住人の口が固いからと言っても二人揃っては流石に」
「皆早く帰りたくて誰がいるかなんて気に止めないよ」
親指で繋いだ手の甲を撫でる。
ほんの僅かな時間、同じ場所に居て少し言葉を交わしただけの相手。
あの時の笑顔を見る事が出来たら、それでいいと思っていた。
…"愛している"という笑顔を自分にではなく、他の男に向けるのを見て、それでいいと言えるのか?
「…夜は部屋に居て、俺を待ってて。出来ないなら連絡して。俺の仕事なんて…タイミングなんて考え無くていいから、何時でも、直ぐ連絡して。取れなければ直ぐ折り返すから、携帯を離さないで」
側に居ないと不安になる。
そして側に居るだけでは物足りない。
気持ちを求めて時には我が儘で振り回してでも相手の世界に入り込んで、自分の存在を植え付け、身体だけでなく心も触れて、繋ぎ止める。
なんて身勝手な感情。
でももう否定できない。
そしてもう、笑って離すこともできない。





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テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2016/05/02(月) 10:55:07|
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