六華(スキップビート二次小説)

スキビ小説が書きたくなって開きました。いつか雪のように無くなります

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

calling the name

あわあわと助けを求めて左右を見ても、勿論誰もいない。人気の無い狭い廊下の奥に連れて来られたのだから当たり前。
だから一生懸命、開かない口の代わりに思いを込めて、自分をこんな所に連れ込んだ上に顔の両側に手をついて壁際に追い詰めている先輩俳優を見上げた。
「…そんな顔しても、駄目だよ?最上さん」
キュラレストの笑顔は怒っている証拠。
必死に記憶を巻き戻して何故こんな事になってしまったかを確認する。

"尊敬する先輩俳優"に会ったから、何時も通りの普通の挨拶をした。ちゃんと、出来た筈。忙しい彼の時間が許す限り話をしようと、ちょっと強引に伸ばした話だって、わざとらしくなかった筈。現に彼はこの時キュラリ笑顔だった。

「ヒカルさん、って誰?」
「…ブリッジロックの、石橋光さんです」

そう、話の最中に携帯が鳴り、そこで立ち去るべきだったろうに未練たらしく彼に断りを入れてその場で出た。
「光さん?お疲れ様です」
内容は気まぐれロックの企画について。坊メインの企画をディレクターに提案する前に、いいか確認したいとの内容だった。
「いいですよ!私大好きです!」
本当に楽しそうな企画だったから、そう返事をしたんだけど。

…思えば、この電話から周りの気温が下がったような。
「あいつ以外に名前で呼ぶ相手がいるなんて知らなかったよ」
「何であいつが出てくるんですか」
三人名字が一緒だから、と言う前に"あいつ"に反応してむっとする。
「名前で呼んで、大好きと言える相手がいたって話」
「大好きは仕事の話です」
「ヒカルさんとやらと一緒で、相手に大好きって言える仕事ってどんな仕事?」
それは口が裂けても言えない。
それよりも、何故彼はこんな話をするのか。
「敦賀さんだって、お仕事相手の女の人を名前で呼んで、大好きなんて言っちゃう仕事、あるんじゃないですか?」
「仕事はともかく、女の人には無いね」
「天然遊び人だから自分で気づいてないだけじゃないんですか?」
「だから何で遊び人なんだ。誰彼構わず名前で呼ぶような真似はしない」
「私が誰彼構わず名前で呼ぶような軽い女だと言ってるんですか」
「そう思っていないから聞いてるんだ」
「私なんぞが名前で呼んだからってどうこうありませんよ!ご心配には及びません!」
「最上さんはそうでも、相手は違うかもしれない」
「名前で呼ばれても笑顔で返す敦賀さんから言われても説得力無いです」
「…名前は」
彼の手が握り締められるのが反らした視線の端に映る。
「ただ一人、特別な誰かを呼んで…呼ばれてこそ意味があるんだ」

彼が名を呼ぶのは、彼に名を呼ばれるのは、私と同じ名前の人

いきなり突き飛ばされて体勢を崩した大きな身体を再び突き飛ばし反対の壁に追い詰めると、だん音を立てて腰の後ろの壁に両手を付く。
「…そんなに名前が呼びたいなら代わりにに呼べばいいじゃないですか」
私は彼の"きょうこちゃん"では無いけれど
「最上さん?一体何を言って…」
「名前を呼んで欲しいなら、私が代わりに呼んであげます」
こんな形で、彼の名を呼びたくないけれど、これはきっと最初で最後のチャンス。
彼の会った事もない"きょうこちゃん"になりきれば、許される。
臥せた顔を上げさせようとしただろう彼の手をすり抜けて、そっと額をその大きな胸に寄せる。
顔は違うから、見ないで。
「………っ、最上さん………!?」

「…………………………蓮」

踵を返した身体を捕まえた腕の力はもがけばもがくほど強くなり、更に引き寄せられて。
「代わりって、誰?さっき本当にその人の代わりに呼んだの?」
「そう、です!敦賀さんの、きょうこちゃん、です!」
「やっぱり、最上さんが呼んでくれたんだ」
何を勘違いしてるか分からないけど
俺のキョーコちゃんは、昔から最上キョーコしかいないんだよ?
だから、蓮って、名前で呼んで?
もう一度、顔を見せて、さっきみたいに名前を呼んで?
俺も、最上さんの名前を呼んでいいんだよね?
「もう、"キョーコちゃん"ではなく、キョーコ、って呼んでいいんだよね?」

敦賀さんが何を言っているのか分からないけれど。
何度も何度もそう言われて、お互い再び口にしかけた彼の名前も、私の名前も、身体の中に消えていった。







スポンサーサイト

テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2014/08/12(火) 12:54:25|
  2. 短編小説
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<拍手お礼とお盆休み。 | ホーム | いつか来る未来 (B.P.D )>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://sunagarekenji.blog34.fc2.com/tb.php/336-d284437d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。