六華(スキップビート二次小説)

スキビ小説が書きたくなって開きました。いつか雪のように無くなります

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

過去の話

東京へ行くと、必ず寄る小料理屋で一人遅い夕食を食べる。

腕が確かな主人と、愛想の良さが評判の妻が切り盛りするその小さな店は何時来ても満員で。

―煩い。

見知らぬ人間が気軽に話し合えるこの雰囲気を人は"心地よい"とか"親しみやすい"とか言うのだろうけど。

少し眉を潜めて箸を置いたその時。
「あれ、キョーコちゃん!帰ってたの!?」
「いらっしゃいませ、お久しぶりです!お元気でしたか?」

明るい、元気な声。

「すっかり有名人になっちって、テレビでしか会えなかったら寂しかったよ~」
「キョーコちゃん、忙しくても身体は大事にしないと。ちゃんと気をつけてる?」
「大丈夫ですよ!!体力には自信が有りますから」
「ご主人とは仲良くしてる?辛い事があったらちゃんと俺達に言うんだよ。みんなで言ってやるから」
「…キョーコ」
無口な主人が口を開く。
「蓮が、待ってるんじゃないのか?」
「あ、はい。では皆さん、ごゆっくり。お父さんお母さん、また来ます」

お父さん…お母さん。

「寒くなったから上着はちゃんと着るんだよ。土産は持ったかい?敦賀さんによろしくね」
はぁい、お母さん達もね、返事と共に遠ざかる足音。
「本当にいい子だねぇ」
「ずっと娘みたいだって言ってたけど、良かったねぇ、やっとお父さんお母さんって呼んでもらえて」
「そりゃあ嬉しいんだけど、実の親御さんに申し訳なくて」
「いや女将さん、お嫁入りだってここからしたんだ。もうこっちが実の親子って言ってもいいだろう」

席を立ち会計をして外に出れば確かに少し寒い。そのせいか周りの人達の歩く速度が速い。
「いいのか?」
背中から、店の主人の声。
「今ならまだ近くに居るはずだ…その為に、何年も通ってたんだろ」
無言でタクシーを止め、乗り込む。
走り出した車の窓ガラスの向こう。
人目に付きにくい場所に二人の影。
女が長身の男と嬉しそうに何か話ししながら大きな荷物を渡している。

「…後悔は無いわ」
そう。自分の人生に後悔は無い。
あの人を愛した事も
憎み合い別れた事も
娘を一人産んで…捨てたことも。
だから今の私がいる。

"頑固な所は、あんたに似たんだな"

店の主人の最後の言葉が頭の中でリフレインする。

一筋、頬を流れる物を無視して笑う。

「…そう、だから、もう二度と来ないわ」



スポンサーサイト
  1. 2013/10/31(木) 18:27:55|
  2. 周りの人々の話
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<イトオシイモノ イトオシムモノ | ホーム | 作品について>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://sunagarekenji.blog34.fc2.com/tb.php/203-14ec05af
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。