六華(スキップビート二次小説)

スキビ小説が書きたくなって開きました。いつか雪のように無くなります

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

きらきらひかる 27

食事に誘っても何処が良いかなんて分からない俺の相談相手は、一人しかいない。
気恥ずかしさを堪えて聞いた俺に社さんは目を見張った後、嬉しそうに笑った。
「任せておけ。女の子なら絶対喜ぶ店を予約しておくよ…ああでも、保津周平の姿で入れない店は駄目だな」
「…いえ」
不安が無いといえば嘘になる。
でも俺の全てを受けとめて、慣れない"本当の名前"を必死に呼ぼうとする彼女に甘えたままでいるのは酷く格好悪いと思った。

だから

「敦賀蓮で行きますから、大丈夫です」


俺は
最上さんの気持ちに応えたいと



涙で潤んだ瞳はねっとりとした熱を含んで
紅い唇が媚びるように歪む
自分が女である事を見せ付ける
大きく開いた胸元
吐き気がする程の嫌悪感
瞬きさえ許されない張り詰めた空気
何かが起こりそうな予感に
身体が冷えていくのが分かる

…違う

この後
何が起きたか
俺は知っている

…何が起きた?


ヒールの耳障りな音に
思考が遮断され

恐怖に支配されて

逃げなければ

そう思うのに身体が動かない
動かせない

そう

敦賀蓮は

動く事も

考える事も

許されない

誰かの気持ちに応える事も

だから

俺は



『ちゃんと考えて行動しないと本当に段ボールの家になっちゃいますよ?』
「敦賀さん!」
呼ぶ声と共に急激に広がる視界
遠ざかる女
流れる世界の中、俺の手を引いていたのは
 どんな姿をしていても
 俺を見つけ、笑う
 あやふやでも俺には変わり無いと
 俺が全て忘れてしまっても
 私が教えてあげると
 俺の側にずっといると
『誰よりも好きで誰よりも一緒にいたい人』
 そう言ってくれた
 そう思った、唯一の彼女
俺の、恋人
「も、がみ…さん」
「海の代わりに何処か連れていって下さい!うんと遠くがいいです!」
俺の腕を引きエレベーターへと向かいながら必死に喋り続ける声が震えている。
「最上さん」
「いっぱい、いっぱい楽しい事しましょう!」
だから、私を忘れないで
明るく、優しく俺の未来を縛ろうとする約束がそう聞こえて
乗り込んだエレベーターのドアが閉まると同時に抱き締めた。
「うん、紅葉も、雪も、桜も一緒に見よう。最上さんの行きたい場所に一緒に行こう。毎年新しい年を一緒に迎えて、誕生日にはローソクを一本ずつ増やそう」
「…私のだけじゃ駄目です…敦賀さんの行きたい場所にも連れて行って下さい」
「俺の?」
「敦賀さんが行きたい場所に連れて行って下さい。見たい景色を、私も見たいんです…だから」
「約束する…必ず守るから」
「絶対、ですよっ」
離さないとばかりに俺の背中に手を回し、強く抱き締め返してくれる恋人が愛おしい。
「うん、絶対」
軽い振動と共にエレベーターが止まり動いていた事に気が付いた途端、最上さんが腕の中から飛び退き見る間に真っ赤になって慌てて乗り込んで来た人に背を向ける。
露になった項から背中まで赤く染まっていて、その艶やかさから目が離せない。
「わたっ、いま、公共の場で何を、おまけに大声で名前を呼んで」
「…うん」
保津周平で呼ばれたら、きっともう二度と敦賀蓮で…本当の自分でいられなかった。
「呼ばなければ別人で通せたのにっ、私困らせただけでっ」
「うん…ありがとう」
「もう、何がどう"ありがとう"なんですか!?」
俺を真っ直ぐに見上げた、恥ずかしさから潤む瞳
何時も明るい方向へと導いてくれる言葉を紡ぐ、淡く色付く唇…
「…………………!」
甘く柔らかな感触に我慢出来ずに二度、三度。
同乗者に視線を向ければ、此方に背を向けている。
「大丈夫、見ていないから」
呆然とする最上さんの手を握り前を見れば、ガラス越しの、闇に沈もうとする世界に溶けそうな自分の姿。

あの女に怯え続け
最上さんを不安にさせる
俺が望んだ"これから"は、そんな物じゃない
…強い心が欲しい
最上さんと一緒に居るために、もっと確かな世界を手に入れるために
あの女が現れても、全てを思い出しても揺るがない強い心が

俺は
何時までも保津周平の影に隠れていてはいけないんだ







スポンサーサイト

テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2016/07/24(日) 22:50:57|
  2. きらきらひかる
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。