六華(スキップビート二次小説)

スキビ小説が書きたくなって開きました。いつか雪のように無くなります

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クロスワールド15

帰らなければ。
あの部屋に。
帰ろう。
彼女が待っているから。
目が覚めると服を着るのももどかしく部屋を飛び出す。
縮まらない距離に自分の足さえも邪魔をしているような錯覚を覚えながら、やっとたどり着いた小さな箱。
クオン…俺と彼女の部屋。
冷気が理性を呼び戻し邪魔なドアを殴りつけたい衝動を押さえつける。それでも焦燥感はノックする間隔を短くして。
早く、顔を見せて。あの悪夢からキョーコの側に帰って来たと、俺に感じさせて。
「最上さん…キョーコ…!」
鍵が開いたと思う間も無くドアを開けると思いきり抱き締められる。
「………!」
「クオンくん…よかった、帰って来た!」
確かめるように頬を寄せるキョーコが愛しくて、細い肩を抱く。
身体でゆっくりと部屋の中へ入れると後ろ手でドアを閉めた。
その音に顔を上げたキョーコが硬直するのを見て、やっと気が付く。
俺…あの役の姿だ。
「クオンくん…だよね?」
「…そうだよ」
彼女はこの姿の俺を見て、クオンと呼んだんだ…あの闇を纏った姿を見て。
ぺたりとキョーコが蓮の頬に手を添える。探るように見つめる瞳にいたたまれなくなり目を反らそうとした時、キョーコがふわりと笑った。
「良かった…ちゃんと帰って来た。いつものクオンくんだ」
「…っキョーコ…っ」
こんなに力を入れたら身体を折ってしまう。
そう思っても止まらない感情のままに抱き締める。
「良かった、ちゃんと生きてた。会えて嬉しい」
「最初から死んでると決め付けていたのに?」
「クオンくんだって、自分はもう死んでるんだって信じてた」
「うん…良かった、あの時死ななくて。キョーコに会えて良かった…」
このままキョーコの全てを自分の中に取り込んでしまいたい。だけど。
生まれや見た目だけで周りに虐げられ、そして全てを諦めて、それでも抵抗せずにはいられなくて。やり場の無い怒りを暴力という形で生きて来た自分。その果てに大切な人を死に至りしめて…こんな自分の罪を体現したような姿で彼女に触れたくない…汚したくない。
クオンは無理でも、せめて敦賀蓮の姿で。
「クオンくん、なんだか大きい」
「こちら側では俺の方が年上だよ」
「私達が出会ったあの世界は何だったんだろう?」
「…天国への扉の前だよ、きっと。背を向けて気づかずにいた俺に、神様がキョーコを呼んでくれたんだ」
部屋に捨てたクオンの気持ちとキョーコの悲しい気持ちが重なって起きた世界。こんな奇跡があるなんて、神の存在というのを認めるしかない。
「…天国はあるんだね…」
窓に目を向ければまだ外は暗い。でも、夜明けはきっともう直ぐ。
「ごめん…もう帰らないと。俺は今訳があって本当はこの姿で人に会ってはいけないんだ。夜…遅くなってしまうかもしれないけど、会える姿で迎えに来るから待ってて?」
「この姿は"やりたい事"をしているから?」
「そうだよ。人に本気に怖がらせるのもその内」
「…悪い事してないでしょうね?」
何時もの口調に戻って蓮が笑う。
「大丈夫、キョーコに説教されたくないからね。そうだ、俺は会える姿でもキョーコに会っていたよ?全然気付いてもらえなかったけど」
「本当!?ごめんなさい!」
後ろ髪引かれる思いで身体を離し玄関へ向かう。
「勝負しようか?待っている間に誰が俺だったか考えて?キョーコの勝ちだろうけど」
「勝ったら何かいい事ある?」
「…俺がずっとキョーコの側にいる」
「…じゃあ負けたら私がクオンくんの側にずっといる…」
「…うん」
きゅっと手を握られた途端、キョーコの胸に不安が過る。
…今この手を離したら、二度と会えないかもしれない
「キョーコ?」
「何でもない。待ってるね」
朝焼けの中を帰っていく後ろ姿を見送って、キョーコはドアを閉めた。

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テーマ:アニメ・コミック - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2014/01/25(土) 04:59:50|
  2. クロスワールド (完)
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