六華(スキップビート二次小説)

スキビ小説が書きたくなって開きました。いつか雪のように無くなります

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クロスワールドafter 後編

蓮が何かを探して次々に部屋のドアを開けてはしきりに見渡している。
彼はあの後一緒に食事をして慌ただしく仕事で泊まっているホテルに戻ったはずなのにと考えて、ああ夢かと思い付いた。何を探しているのか聞こうとして、ふと夢ならばと呼べない名前を口にした。
「蓮さん」
振り向いた蓮が驚いたように自分を見た後、安心したように微笑むのを見てやっと気付いた。
"蓮"は一緒に生きようと誓った23才の恋人の名前。だから彼はそう呼んで欲しかったんだ。
「蓮さん」
恥ずかしがらず、もっと早く呼べばよかった。帰ってきたら勝負なんて言葉で誤魔化してと怒ってやらなくては。
そう思いながら笑い、その大きな手を掴んだ。


驚いて目が覚めた蓮は顔が赤くなるのが分かって思わず腕で覆った。
「…不意討ちはなしだ」
夢の中で蓮はキョーコを探していた。"15才のクオン"のところに行ってしまったのか、それとも"敦賀さん"には頼らず一人で生きていくと出て行ってしまったのかと居る筈の彼女を探して次々に部屋のドアを開けた。
「蓮さん」
呼んで欲しい名前で呼ばれて振り向いたその先の顔は、初めきょとんとしたものの見る間に頬を染め、甘く、そして少し咎めるように再びその名を呼んだ。
「蓮さん」
きっとキョーコは夢だと思っているだろう。けれど自分には分かる、あれは天国の門の前だという事が。その証拠に、掴んだ手の温もりがしっかりと残っている。
キョーコは何時も、何処に居ても自分の不安定な感情を受け止めて、その小さな手で明るい方へと導いてくれる。今だって開かれた天国の門の向こう側両手を差し伸べてくれた。
今度帰ったらきっと彼女は"蓮さん"と呼びながらお説教するだろう。ちゃんと聞かないと長くなる。でももう"15才のクオン"でも"他人の敦賀さん"でも無く"23才の蓮という名の恋人"だから、その唇を塞いで今度こそ自分の中に取り込んで。
不安に思う事なんて何もなかった。

自分がそうであるように、彼女もずっと、側に居てくれるのだから。




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テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2014/06/07(土) 05:04:54|
  2. クロスワールド (完)
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クロスワールドafter 前編

かふかふと変な音を立てて口を動かすキョーコに蓮は笑う。
「ただいま。無理しなくていいよ?」
「勝負に負けるのは嫌です!」
「じゃあ頑張って」
"蓮"と呼べるか呼べないかの自分との勝負、今のところキョーコは負けっぱなしだ。
名前が呼べないからといって自分達の仲がどうこうなるとは思っていないが、呼び方について聞いた時"クオン"とは呼べないから"蓮"と言ったのは理由は分からなくても"敦賀さん"ではなくそう呼んで欲しいからだとは理解している。
だから今日だって本当は「おかえりなさい蓮さん」と言おうとしたのに恥ずかしさが先にきて「おかえりなさい…かふかふ」になってしまった。
「何してるの?」
声をかけられてリビングに続くキッチンの入り口から蓮の様子を伺っていた自分に気がつく。
「クオンくん」
大切な存在を確認する秘密の名前。
「どうしたの?キョーコ」
「…敦賀さん」
この世界で出会った彼の、もう一つの名前。
「…………」
じゃあ"蓮さん"は?
「…………」
「…ご飯、食べる?」
「うん、でも先にお風呂に入ってくるよ」
蓮の姿がバスルームに消えて、キョーコはまた負けたとがっくり膝をついた。


キョーコの困った顔を思い出し蓮は洗面台に手をついて深い溜め息を付いた。勝負と言えば勝ち気なキョーコ直ぐそう呼ぶだろうと踏んだ目論見は見事外れて未だに"蓮"とは呼んで貰えない。
キョーコと出会えた事で受け入れたとはいえ自分の暗い過去が公になる"クオン"と呼ばれるのは確かに困るが、それよりも自分が"年下の幽霊さん"ではなく、一人で生きていく為に距離を置いた"敦賀さん"でもない事を確認したかった。
沸き起こる不安は、やっとキョーコが気付いて側にいるというのにしっかりした安心感が持てないまま映画の撮影が始まってしまい帰るのもままならなくなってしまったせいだと思うが、こればかりはどうしようもない。
無理強いはしないと決めている。
何時かはきっとと自分に言い聞かせてバスルームのドアを開けた。



テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2014/05/24(土) 17:00:57|
  2. クロスワールド (完)
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クロスワールド18

路地を覗き混むと遊び相手を探していた犬は直ぐにキョーコを見つけて、ばさばさと太いしっぽを振る。
「りゅうくん、だっけ」
頭の上から聞こえるテノール。
「正確には龍雲、くんです」
「強そうな名前だね。空も飛べそうだ。困っている人の横で寝ている時夢に見る位好きなの?」
「いえ、あの、ク、つ、ええと」
言い淀むキョーコに蓮が笑う。
「本名で呼ばれたい気もするけど内緒だから…今の名前も長く使っているから愛着あるし俺としても悩むな」
「では一体どうしたら」
悩むふりをしてキョーコをちらりと見る。
「そうだな…蓮、は?クオンでも敦賀さんでもなく、蓮」
「れ!?」
「うん、正しい音程だね」
「そうじゃなくて!芸名とは言え年上の、しかも男の人の下の名前を呼ぶなんてハードル高過ぎです!」
じゃあどうする?と聞かれ言葉に詰まる。
「勝負だよキョーコ。このまま名前を呼べずにいるかいないかの」
「は、初めから負けてます…!」
「出来ると信じて進むのみ、だろ?」
「…出来るまで側に居てくれますか?」
「勿論、約束だから」
手を差し出して。
「帰ろう?俺達の部屋に」
「…広過ぎて落ち着かないんですが…引っ越しは無理ですか?」
「無理。今の俺の部屋が一番安全だから。守ると決めた以上それは譲れない」
はぁそうですか、と途方に暮れたキョーコは少し考えた後うん、と顔を上げる。
「大切なのは二人一緒に居られる事ですよね」
「そうだよ。だから一緒に帰ろう」
天国への扉の向こう側へ。

二人一緒ならきっと、空も飛べる。

                    終
  1. 2014/02/02(日) 05:57:32|
  2. クロスワールド (完)
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クロスワールド17

疲れちゃった。
うとうとと眠りに誘われながら考える。
このまま、ずっと寝ていたい。そうすればもう思い煩う事も絶望する事もなく、幸せな夢を見続ける事が出来るかもしれない。
「本当にそれでいいの?」
ええと、誰だっけ。
「やっと会えたのに、キョーコは俺の側に居てくれないの?」
ああ、そうだ。クオンくん。
闇が暗すぎて顔は見えないけど。
クオンくんに会えただけでもう充分よ…私、もう疲れちゃったの。お願い、寝かせて?
「ダメだ諦めたら。笑って死ぬのが夢なんだろ?」
いいのもう。無理だから。きっとアイツがついてきて私の夢を壊し続けるから。
「夢なら一緒に何度でも見よう。壊されたら一緒に何度でも作ろう。零れた水を何度でも遠くへ汲みに行くように」
本当に、出来るかな?
「出来ると言ったのはキョーコじゃないか。俺が一緒に行く。一緒に行こう。二人でならきっと出来る。キョーコがそうしてくれたように…今度は俺がずっと側に居る」
クオンくんが本当にそうしてくれたら出来るかもしれないね。
「勝負を忘れた?」
そうだ。勝負したんだ。私が勝ったらクオンくんはずっと側に居てくれるって。
「答えを教えて」
朝日が射し込むように周りが明るくなっていく。
「今の俺からもう一度言わせて」
闇の中から徐々に姿が浮き上がってくる。服が、髪が何時もと違う。あの黒づくめでもないけど見覚えがある。
「キョーコの側にずっと居ると」
そう、闇に沈む前に見た。前にアイツから助けてくれた、助けたいと言ってくれた、あの人。
「今の俺にもう一度キョーコから聞かせて?」
光が部屋の中を照らす。

「俺の側にずっと居るって」



  1. 2014/02/01(土) 23:42:00|
  2. クロスワールド (完)
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クロスワールド16

気が付くと机の上でうつ伏して寝ていて、キョーコは慌てて時計を見る。
もう15時。ね、寝ている間に来たって事は、無いよね?クオンのむくれた顔とデコピンを思い出し思わず額を撫でながら冷や汗をかく。
夜って言ってたから大丈夫よね?
クオンが帰って来た事が夢のようで、再び胸に不安が過る。
「そうだ、掃除しよう。買い物にも行ってご飯作らなきゃ」
そう、もし夢でも…クオンくんが来なくても私は大丈夫。今までだってそうだった。夢を見て期待して、現実が裏切るなんて何時もの事だからがっかりなんてしない。バイト先には朝電話しちゃったけど…たまには理由も無く休んでいいよね?
そう考えながら部屋を片付けて一人には多い食材を買い、料理を作ると窓の外は既に暗くなっていた。
もし夢なら、今日の夜またあの部屋でクオンくんに会える?夢なら…夕陽が沈んだらクオンくんと別れる事になるの?
ドアチャイムの音に弾かれて慌ててドアを開ける。
「クオンくん!」
「誰だソレ」
「…ショー…」
さぁ、と体温が下がるのが分かる。絶望とは今の気持ちの事を言うのだろうか?
「今朝この部屋から出てきた男の名前か?地味で色気もねーのに、よく捕まえる事ができたな」
「…捕まえるとか、そんな事じゃ、ない。帰って」
「あの男は部屋に入れて俺はダメってか。そんなワケないだろ」
無理に入ろうとするのをどうにか阻止し、そのまま階段へと押して行く。
「何だよ!あの男が来るから俺が邪魔なのか?心配しなくてもお前の所になんか来やしねーよ!夢見てんじゃね―よ!」
何が悪いの?私は夢見てはいけないの?そんな価値も無いの?夢くらい見せてくれたっていいじゃない!
「そんな女の所に来るアンタも大した男じゃないくせに!」
「何だと?てめぇ何様のつもりだ!尽くす事しか能がないくせに!お前は一生俺に尽くしてりゃいいんだよ!」
「死んでもお断りよ!」
渾身の力で押そうとした瞬間、ショータローが身を翻しバランスを崩したキョーコの身体が宙に浮く。

あ 

衝撃、痛み、目の前を通り過ぎる足。誰かが階段を上る音。
「キョーコ!」
ぼんやりした視界に見覚えがある顔が写ったのを最後に意識が闇に沈んだ。
  1. 2014/02/01(土) 15:09:45|
  2. クロスワールド (完)
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