六華(スキップビート二次小説)

スキビ小説が書きたくなって開きました。いつか雪のように無くなります

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幼なじみ 13

試合がもう始まっている。
球場の外からでも分かる盛り上がりに慌ててチケットを確認して席に向かう。
一年振りに逢うのに遅刻してしまった。
原因は電車に乗り遅れるほど悩み抜いた服。靴は思い切って買ったんだけど。
「遅くなって、ごめんなさい」
「大丈夫。まだ試合動いてないから」
グランドから目を離さず答える人の手には、ビール。
「駄目だよ。未成年なんだから」
「言わなきゃバレないよ」
…何度もメールや電話して気が付いたけど、普段凄く真面目なせいか気を抜いた時との落差が激しいんだよね。取り上げる時向こう隣に座る人が男の人なのに気が付いて少し安心する。
選手がバッターボックスに立つ度に起こる応援歌。お父さん達が観ていたテレビからでは分からない迫力。溜め息、歓声、野次、声援。その中でベビーカーに乗った赤ちゃんがスヤスヤと寝ている。
「凄いね。うるさくないのかな?」
「きっともう、慣れてるんだろうね」
「こうして、小さい時からずっと接してて好きになっていくんだね…蓮ちゃんはいつから、好きだったの?」
「初めて会った時から」
よく覚えてる。知らない国に来てしまった事とか、このままお母さんに会えないんじゃないかとか不安だった。そんな俺にキョーコちゃんは笑って、抱きしめて、頭を撫でてくれたんだ。天使ってキョーコちゃんの事だと思ったよ。
ボン、と顔が火を吹く。や、野球の話の筈なんだけど!
「わ、私、普通の女の子だよ」
「うん。キョーコちゃんが普通の女の子で本当に良かった。天使だったらキスどころか抱き締める事も出来ない。」
「なんか前帰って来た時と性格変わってませんか!?」
思わず肩を叩こうとした手を蓮ちゃんに捕られて握られる。
キョーコちゃんは怒ると敬語になるよね、って言いながら。
「小さい時からこうだよ?キョーコちゃんが俺に気付いて、駆け寄って、抱き締めてくれるのをずっと待ってた」
ししし知りませんでした!
「蓮ちゃん、恥ずかしいから手離して」
自分からは離せないから。
「ダメ。大丈夫みんな気付かないよ。ほら、七回裏だ」 続きを読む
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  1. 2013/12/02(月) 05:48:30|
  2. 幼なじみ (完)
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幼なじみ 12

熱を出して寝込んでいる間に、蓮ちゃんはアメリカに帰ってしまった。

「せいせいしたな」
ポストにテープを貼られたドアの前に立つ私に、ショーちゃんが声を掛ける。
「邪魔も居なくなったし、ゆっくり話しようぜ」
「…ショーちゃん、恋って何?」
「あぁ?」
「ショーちゃん、恋だの愛だのって歌作ってるじゃない。だから、分かるよね?」
そりゃ、まぁ、な、と言葉を濁したショーちゃんが一瞬考え込む。
「…ソイツの事しか考えられねーとか、側に居るのは自分だけで他の奴は許さねーとか」
「それだけ?」
「後はやっぱり、いきなやりキスされよーがセックスされよーが、イヤじゃないって事かな。男と女が行き着く先はそこしかねーし」
「ショーちゃんとは無理よ。一生、無い」
「ああそうかよ」
ガリガリと頭を掻いて、ショーちゃんが溜め息を付く。
「ほらよ」
アイツのメルアド、と小さな紙を差し出す。
「お前を落としたら連絡してやろうと思って聞いといた」
「…最低」
「蓮にも言われた。お前の悔しがる顔が見たかったって言ったらな。でも俺は絶対落ちない女を追いかけるほど暇じゃねーんだよ」
じゃあな、とひらひらと手を振って帰って行くショータローの背中から、小さな紙に目を移す。
そうか。蓮ちゃんの隣にいる人を想像出来なかったんじゃなくて、嫌だったんだ。
蓮ちゃんは私だけ見ていてくれるって思っていたのに、例えでも他の"大切な人"の話されたからあの時私はあんなに腹が立ったんだ。
…キスされて、嫌だった?
ううん。びっくりはしたけど。
他の人と蓮ちゃんが、そんな事するなんて…想像したくない。
私の気持ちは、自分でも気付かないまま蓮ちゃんに向かっていた。

もう遅いのかな…。

家の鍵を取り出そうとポケットに入れた指に、コツンと硬い物が触れる。
蓮ちゃんの石。
あの後、濡れたまま郵便受けに入っていた石。
きっと蓮ちゃんが雨の中探して…

私、自分から何かした?
何もしてない。

晴れ渡る青い空を見上げる。

試合に負けると分かっていても、ボールは最後までちゃんと投げなくちゃ。
  1. 2013/12/01(日) 19:26:20|
  2. 幼なじみ (完)
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幼なじみ 11

「…何探してるの?」
雨音に混じって、蓮ちゃんの優しい声。
「…何でもないです。ほっといて下さい」
「でも濡れてるよ?」
「…」
答えない私の腕を蓮ちゃんが掴む。
「キョーコちゃん」
「…」
「取り敢えず、入ろう。風邪引くから」
黙ったままの私を引っ張って階段を上がる。三階に着いて、少し迷った後、蓮ちゃんは部屋に入れてくれた。
「俺の服だけど、着替えて。濡れたままよりはマシだろ?」
鞄から服を差し出す。
部屋の中には冷蔵庫とベッド、数個の開いた様子が無いダンボールの箱。帰って来たにしては少なすぎる。
「ほら、本当に風邪ひくよ?」
渡された服が蓮ちゃんの体温で温かい。
「…ごめんなさい」
バカなんて、嫌いだなんて言ってごめんなさい。全部嘘。ずっとずっと、蓮ちゃんに側に居て欲しいの。泣きながら話す私に困ったように笑って。
「ずっと側に居られる方法、一つだけあるよ」
「…何?」
「キョーコちゃんが、俺のお嫁さんになればいい」
そうすれば、ずっと一緒だよ。驚いて目を見張る私に蓮ちゃんが続ける。
「俺はずっとキョーコちゃんが好きだった。小さなガキが狭い世界で身近な女の子を好きになっただけだと思ってた。だけど…いつも真面目で一生懸命で、俺を信じて笑ってくれるキョーコちゃんを忘れる事が出来なかった」
長い指が頬を撫でて、首筋から肩に流れて行く。
「二人きりになるのが怖かったんだ。いつか俺以外の男が隣に立つのかと思うと気が狂いそうな気持ちを、そのままキョーコちゃんにぶつけてしまいそうで」
蓮ちゃんの顔が近づいて唇に吐息がかかる距離で止まる。
「…安心してキョーコちゃん。幼なじみでは無くなった男は、もう直ぐここから消えるから」
唇は触れることなく反れて私の肩に顔を埋める。
「もう、帰った方がいい」
離れていく蓮ちゃんのシャツを慌てて掴む。ここで帰ったらきっともう蓮ちゃんに会えない。居てもいい理由を必死に探す。
「いつから?いつから、私の事…その…」
私の手をほどいて、玄関のドアを開ける。
「帰って。このままだとキョーコちゃんを傷つけてしまうから」
凄く辛そうな顔。それでも首を横にしか振れない私の唇に蓮ちゃんが噛みついた。

「分かっただろ…?もう、キョーコちゃんが知っている"蓮ちゃん"はいないんだ」

外に押し出された私の背中で、鍵がかかる音がした。


  1. 2013/12/01(日) 18:39:16|
  2. 幼なじみ (完)
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幼なじみ 10

雨が降ってきた。

アパートに入る前に蓮ちゃんちの窓に明かりが点いてるか確認する。
真っ暗だから、夕食を買いにいったのかもしれない。
あれからお裾分けもしてないから全然会わない。ちゃんと食べてるのかな?
そう言えば蓮ちゃん、傘持ってるのかな?最近寒くなってきたから、濡れて帰ってきたらお風呂に入って体暖めた方がいいんだけど。
自分の家の小さなお風呂を思い出して、そこに大きな蓮ちゃんが体を縮めて入るのを想像してちょっと笑う。同じ作りだから、そうなるよね。

ポケットから石を取り出してかざす。

いつもは明るい色も夜の闇のせいで暗い。当たり前の事だけど今はそれが寂しい。

"俺に大切な人が出来たら…"

野球してた頃の、蓮ちゃんが浮かぶ。
遊び呆けてるショーちゃんと違って練習熱心で、私のピッチャー練習にもずっと付き合ってくれた。練習では上手く投げれても試合になるとガチガチになってしまう私の緊張をほぐすのも蓮ちゃんで、肩や肘が痛くなったのを一番に気付くのも蓮ちゃん。ちゃんと球数も数えてくれてて、私の負担を少しでも減らそうと考えてくれて。そんな蓮ちゃんが居るから、いつか必ず帰ってくるからってずっと考えてた。
ずっと側に居てくれるって思ってた。
だけど違うって言われて気付いた。
私達は兄弟じゃない。同じ時間を他の人より少し多く共有しただけの他人なんだ。いつか、蓮ちゃんの隣に私の知らない女の人が立ってアメリカよりも遠い所に行ってしまうんだ。

私は、ずっと、隣に蓮ちゃんがいると思っていたのに。
「…蓮ちゃんのバカ」
「まだその石持ってたのかよ」
いつの間にかショーちゃんが後ろにいて、私の手から石を取り上げてまじまじと見る。
「返してよ」
ショーちゃんから、ほんのり香水の匂い。女の子と一緒に居たんだ。ショーちゃんの隣に違う女の子が居るのは想像出来るのに、何で蓮ちゃんの隣にいる人は想像出来ないんだろう。
「こんな石持ってるのが悪いんじゃねーか?」
「どういう意味よ」
「蓮にこだわっている事だよ」
そういうと、闇の中に投げ捨ててしまった。
「な!何するのよ!!」
「今朝、聞いたんだけどよ、蓮の奴アパート引き上げる為に帰って来たらしいぜ」
一瞬、目の前が真っ暗になる。
「…うそ」 続きを読む
  1. 2013/12/01(日) 09:46:43|
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幼なじみ 9

「…蓮ちゃん、手痛いよ」
「…」
階段の途中。
離された手はじんじんしてて、思わずさすってしまう。
「何でそんなに幼なじみって言葉にこだわっているの?」
「え?」
「大きくなれば一緒にいる時間はどんどん少なくなる。一人で過ごす時間の方が多いんだ。俺だけじゃない、その間にショータローもキョーコちゃんも変わってしまう」
「…私は変わらないし、ショーちゃんも変わってないよ」
「あんな事されてもそう言えるのか?幼なじみって言うなら昔はいくらでもあんな風に引っ付いていたけど、嫌がっていただろ?嫌がったフリだった?助けたつもりだったけど違ったのか?」
「…」
何も言えない私に背を向けたまま、蓮ちゃんが深い溜め息をつく。
「キョーコちゃんとショータローは17才の女の子と男で、俺は18の男だ。小さい時は同じ目線に立てても大人になればそうはいかない。恋愛感情が絡めば尚更」
「…恋愛感情?」
「…例えば、俺に大切な人がいて」
どくん、と心臓が跳ねる。
「その人がキョーコちゃんと俺が一緒にいるのを嫌がったら、俺はキョーコちゃんに会わないよ」
「…どうして」
「誰よりも、幼なじみよりもその人を大切にしたいから。キョーコちゃんだってそうだろ?」
「私は何言われても」
「それはキョーコちゃんがまだ本当に好きになった人がいないからだ」
ブツっと何かが切れた。
「何ですか本当に好きな人って」
「キョーコちゃん?」
胸が痛い。むかむかする。
顔を見れないから、こちらに向いた蓮ちゃんの靴のつま先に向かって話す。
「お父さんは出て行ったしお母さんは仕事が忙しくて全然私を見てくれない。蓮ちゃんだって遠くに行って会えなかったしショーちゃんも変わってしまった。変わらないのは蓮ちゃんに貰った石と三人一緒に育ったって事実だけ。それを大事にして何が悪いんですか!?変わって欲しくないって思うのは駄目なんですか!?」
「キョーコちゃん、俺は」
「蓮ちゃんのバカ!大嫌い!!」横をすり抜けて階段を駆け上がった。


  1. 2013/11/30(土) 20:32:46|
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