六華(スキップビート二次小説)

スキビ小説が書きたくなって開きました。いつか雪のように無くなります

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

はるのやよい

また。

朝起きて、今日こそ片付けなければと雛飾りに目を向けたキョーコは眉をしかめた。
後ろを向かせた筈の内裏雛が、前を向いている。
この雛人形は昨年産まれた娘の為にだるまや夫妻が買ってくれた品で、三段階飾りではあるが立派な御殿付きで出すのも仕舞うのも気を使うし運ぶのも一人では無理がある。
「おかあさん、どうしたの?」
「コウ、またお雛様に触った?」
初節句の食事会を終わらせ一週間のロケに出かける夫を見送った後、取り合えずと後ろを向かせたが朝起きると前を向いていて。
台に乗れば、五歳の長男でも手が届く高さ。
すんなり認めたコウに「これは大切なお人形だから触っては駄目よ」と言い聞かせた筈なのに。
「……………ぼくじゃないよ」
何度目かの質問に、何度目かの返事。
相変わらず目が泳いでいる。
コウはもう話を理解出来ない年ではない。禁止された事をする理由がある筈とじっと見つめる母親に、いたたまれなくなったコウが口を開く。
「きっと、おにんぎょうが」


やっぱり。

蓮は玄関に立つ妻の姿が予想通りで、思わず笑いそうになる口許を引き締める。
「おかえりなさい、蓮さん」
「ただいまキョーコ」
「で、どういうつもりですか?」
鞄と上着を受け取った妻の声に険がある。
「何が?」
「雛人形です!コウに嘘付かせてまで前を向かせる理由を言って下さい!」
てきぱきと荷物を片付けながらじろりと睨まれて蓮は着替えながらとぼけた。
「コウが嘘?」
「そうですよ!お人形が自分で前を向くんだなんて嘘を」
「本当に嘘?」
「は?」
「本当に人形が自分から前を向いているのかもしれないよ?」
「え?」
「いや、もしかしたらこの部屋には妖精がいて人形を動かしているのかも」
「妖精が…」
「そう、妖精」
「って、妖精はそんな事しませーーーーーん!」
「キョーコ、大声出したら子ども達が起きる」
「いいですか!?妖精は王子様で女の子と一緒に末長く暮らすんです!」
「俺達と一緒に末長く暮らすんだから妖精は王子様じゃない」
「…本心を言いましたね」
しまったと思っても時既に遅し。
「娘にお嫁に行って欲しく無くてコウに言って前を向かせていたんでしょう?」
そう、食事会の時キョーコが女将さんから言われていたのを聞いていたのだ。
「早く片付けないとお嫁に行きそびれるって言われてるけど、仕事に復帰したばかりだし敦賀さんも忙しくてなかなか片付けられないだろう?その時は後ろを向かせときなさい」
つまり、飾ってある間前を向いていればその分長く親の元にいる訳で。
「私達の板挟みでコウが可哀想じゃないですか!薔子だって何時までも一人でなんて可哀想です!」
「…キョーコだって、一人で生きていくつもりだったじゃないか」
「だけど蓮さんと恋をして結婚して凄く幸せだから薔子も同じように幸せになって欲しいんです!」
一瞬の沈黙。
「…………キョーコが凄く幸せで良かった」
「蓮さんのお陰です…ありがとうございます…だ、だから」
気恥ずかしい空気を払う為、蓮は雛人形が仕舞われた箱を納戸に運びキョーコはわざとらしく咳払いをする。
「まだ先の事に今からそんな気持ちでいたら困ります」
「たった16年だよ?」
「は?」
「国が認める立派なレディになるの」
「なっ」
「キョーコがそう言っ「あれは鶏です!鶏!人間世界の常識を知らないんです!」
「じゃあ三十路を越えても「やっと一緒になれたと言ってくれた時私何歳だったか覚えてますか!?」
全て片付け終わって、ビール片手に久しぶりの妻の手料理を食べていた蓮が、雛人形が飾ってあった場所に視線を向けぽつりと呟く。
「狭い部屋じゃないし…出すのも仕舞うのも大変なら、もう出しっぱなしでもいいんじゃないかな」
まったくもう、この妖精の王子様は。
「楽しそうだね。何かあった?」
「別に何もありませんよ」
来年、再来年、その次のこの頃を考えながらキョーコは箸で取った料理を夫の口許へと差し出した。






スポンサーサイト

テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2015/03/08(日) 09:10:00|
  2. 未来予想図
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

名前

「私も、漢字の名前が良かったな」
ぽつりと言った彼女の顔を覗き込む。
「どうして?」
「久遠って、いい名前ですよね。永久、流れゆく時間の限りないこと。ずっと幸せな時間が続きますように、ずっと長生きするようにって。先生の愛情いっぱいです。蓮は花の名前。凛と咲く姿がぴったりです」
それに比べて、と拗ねるような、ちょっと泣きそうな顔で言う。
「よりにもよって、カタカナですよ?適当に付けたとしか思えません」
「…じゃあ、漢字にするなら?」
「例えば…ありきたりだけど」
紙に綺麗な字で書いたのは"今日子"。
「今日を生きる子、か。何時も一生懸命のキョーコにはぴったりだ。他には?」
ちょっと考えて、恭子。
「恭しい子。これも何時も礼儀正しいキョーコにはぴったりだね」
響子
「影響を与える子。周りを巻き込むのが得意な君の事だね」
杏子
「…確かにキョーコの身体は何時も瑞々しくて甘くて…」
バン!と背中を叩き怒った顔で次々に書いていく。
京子
鏡子
教子
享子…
「…出尽くしちゃいました」
困った顔で、キョーコが告げる。
「うん、どれもキョーコらしくて迷うね。で、どの字がいいの?」
「…蓮さんがどの字も私らしいって言うから判らなくなっちゃった」
「そうだね。きっとキョーコの両親も、迷って迷って、全部の意味を込めてキョーコにしたんじゃない?」
戸惑う瞳に唇を寄せる。
「本当に、そう思いますか?」
「うん、だって、選べない」
そっと、キョーコの少し出てきたお腹を撫でる。
「さあ、考えよう。この様子だと時間がいくらあっても足りなさそうだ」
無限の可能性と、明るい未来と。

そして何よりも、愛情を込めて。
  1. 2013/11/28(木) 05:27:41|
  2. 未来予想図
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

みどりご

「キョーコ、調子はどう?」
「蓮さん…」
低い鴨居に気をつけながら、狭い病室に入る。うたた寝をしていたらしいキョーコは、見繕いをしながら起き上がった。
「大丈夫…です」
キスをしてから、隣に眠る小さな小さな存在に目を向ける。

ほんの2、3日前に生まれた新しい家族。俺とキョーコの子供。

もそもそと動いたかと思うと小さな口で欠伸をし、うっすらと目を開けた。

…こんな何気ない仕草が愛しいと感じるのは、キョーコ以外いないと思っていた。

「名前…考えないとね」
「そうですね…結局決まらなかったから」

お腹が目立ち始めた頃から二人であれこれと考えたが決まらなかった。
「…光を現す名前がいいな」
「光…ですか?」
「そう、俺達を照らす新しい光…そしてこの子の未来に何時も光が射しているように」
俺がそうだったように、この子も親の存在に苦しむ時が来るかもしれない。だけど…幼い頃のキョーコとの記憶のような、小さくても明るく照らす光が、この子にあるといい。

そんな思いで顔を眺めていると、ふと未だ見えないはずの我が子と目が合って…
「…笑った」
「本当ですか!?」
「一瞬だけど確かに今、笑ったよ。また笑わないかな」
指で小さな手に触れると、キュッと掴まれて。その暖かさと力強さに思わず抱き上げたら、片手でも余る小さな頼りない体。
「首、気をつけてください」
「うん」
額にそっとキスをして、小さく呟く。
「俺達の所に、産まれてきてくれてありがとう」

お父さんは、君とお母さんをずっと守っていくと改めて誓うよ。


  1. 2009/07/10(金) 11:22:26|
  2. 未来予想図
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ジューンブライド最終

邪魔なベールをやっと外せる。
「…ん、敦賀さ…!」
慌てた彼女の声に、自分が予定以上に長く深いキスをしていた事に気が付いた。呆然とした友人達と神父、頭を抱える父さん、満面の笑みの社長、怒り心頭の大将…
「神様の前ですよ?恥ずかしくないんですか?!」
真っ赤になって抗議する彼女にもう一度キスをして言う。
「これぐらい神様も目を瞑ってくれるよ」
そう、先は永いんだ。これ位は目を瞑らないと神様だって呆れて付き合っていられないだろう。

俺達は、始まったばかりなんだから。

  1. 2009/05/27(水) 06:06:15|
  2. 未来予想図
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

ジューンブライド3

お姉様、本当に綺麗…。良かったわ、お二人の希望の"静かな結婚式"が出来て。呪いグッズ片手におじいさまを脅した甲斐があったわ。ベールの裾を持ってクスクス笑う私に、お姉様は少し不思議そうな顔をする。
「どうしたの?マリアちゃん」
「ううん。何でもないの」
これからもお二人の邪魔をする人は許さない。全身全霊を掛けて、呪ってやるわ。そう心に決めた時、蓮様に続く道のドアが開いた。


大将の腕に手を置いて、彼女がヴァージンロードを静かに歩いて来る。
久遠の姿で立ちたかったな。
そんな自分の思いに驚く。俺の中で闇でしかなかった"久遠"でここに立ちたいなんて…いつの間にか彼は彼女によって清められて、"敦賀蓮"と一つになっていたのか。ますます愛しさが募る。彼女の手を取ると式が始まる。響くパイプオルガンの演奏。賛美歌。神父の言葉。ベールの向こうの彼女の睫毛が震えているのが見える。
「…では誓いのキスを…」
  1. 2009/05/27(水) 05:54:06|
  2. 未来予想図
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
次のページ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。