六華(スキップビート二次小説)

スキビ小説が書きたくなって開きました。いつか雪のように無くなります

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

裏の裏

その言葉は時と場合によって酷く胡散臭い響きを持つ場合がある。
時と場合を選ばなくてもその姿と行動で充分胡散臭さを醸し出す事が出来る、キョーコが所属するピラミッドの頂点に立つ人は「ご褒美をやろう」とニヤリと笑った。
「これから忙しくなるぞ。せっかくパスポートを取ったんだ、その前にいってこい」
裏があるに違いない。もしかしたら裏の裏の裏、いや裏の裏の裏の裏の裏かもと指折り裏の数を数えるキョーコに、その人の寡黙な秘書は飛行機のチケットを差し出した。

こうして半ば強引に飛行機に乗る羽目になり約半日かけて訪れた氷点下の世界には、何故か彼の先輩俳優が居て、今、粉雪の舞う中キョーコの横を白い息を吐きながら歩いている。
「敦賀さん、どうしてこんな所にいるんですか?お仕事は?」
「BJの撮影で休みがなかったから、少しまとめて貰ったんだよ」
幸い生放送が入ってなかったからと笑った先輩が、斜め前に指を指す。
「ほら、見えてきた…」
雪のレースの向こう側、閑散とした林の間に見えるもの。
それは白い世界に溶けてしまいそうな姿で建っていた。
「シンデレラ城のモデルだよ。白鳥城と言われるだけあって、白いね」
「白鳥の、城…」
やっと視線を蓮の顔から離したキョーコが呟く。
「来て良かった?」
「はい!私、本物のお城初めてです!」
「そう。頑張った甲斐があったよ」
頑張った?もしかして休みを取った事?
先輩の事だから生放送以外の仕事もあって、だからその前も後も殺人的に忙しいに違いない。今更気付いたキョーコの”何故そんな無理をしてまで”と書いた顔を見て蓮が微笑む。
「約束…遅くなって、ごめん」
"今度 また"
「ここしか思い付かなくて…思ったより時間がかかってしまった」
"何処かに 出かけよう"
「…敦賀さん、と?」
兄さんと ではなくて
「約束しただろう?」
セツカとの ではなくて。
「今ここに居る俺達は兄妹でもなく、役者でもなく、敦賀蓮という名を持つ男と最上キョーコという名の女の子だから」
手袋を外した手が、キョーコの頬を撫でて肩に触れて、胸の中へと導く。
「恋人に、なろう…キョーコちゃん」
熱を出して倒れた彼が呼んだ名前と、同じ響きで。
「社長さんの裏が、敦賀さん?」
「裏?」
「だって社長さんがご褒美と言ったんですよ?何か裏があるとしか思えません」
「そうだね…そうなる、かな」
「敦賀さんの裏は?」
「たくさん有りすぎて、ここでは話し切れないよ。でも今言った言葉にも、気持ちにも裏はない…今まで最上さんに伝えた言葉にも」

”俺の この人生を終えるまで お前の俺で 生きてやる”

"どんな無理な約束でも 守り通してみせる"

「だから…触れていい?」
少し身体を離した蓮が、キョーコの唇に親指で触れる。
「誓いを、ここにしたい」
これにはきっと裏がある。
だから本気になんてしない。
でも
「私にも裏があるんです」
「キョーコちゃんに裏が?」
両手の指では足りなくなって、もうどれだけ数えたか忘れてしまったけれど。

「……私」

今、本当の事を言っても、きっと沢山の裏が覆い隠してくれる。

 






スポンサーサイト

テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2016/01/17(日) 13:13:28|
  2. 短編小説
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

一年の始まり

今、何時だろう?

カーテンの隙間から射し込む光に、キョーコはぼんやり考える。

八時はとっくに過ぎているよね…

お正月にこんな時間まで寝ていたのは初めてだと、止まりそうな思考で考える。
今までなら日が昇る前に起きて、お節とお雑煮で食事して…

京都に居たときは、もう働いてた

新年を京都で迎えたい宿泊客で部屋が全て埋まっていて目が回る忙しさだった。
「…何笑ってるの?」
後ろから伸びた手がキョーコの身体を暖かな腕の中へと引き寄せる。
「お正月に、こんなにゆっくり寝ていたのは初めてだなぁ、って思って」
「そう…なんだ?」
「特に忙しい行事の一つですから。それはもう、天手鼓舞になって…」
「……………何をするの?」
「女将さんが各御部屋に新年のご挨拶に伺うのに付き添ったり、お点前のお手伝いをしたり。普段よりも御客様が多いから準備も大変で…」
"天手鼓舞"に腕が一瞬硬直したのに"してやったり"と気を良くしていたキョーコは、ここでやっと自分の失言に気が付いた。
「思い出していたんだ?俺が居るのに」
「いえ、あの、仕事の忙しさを、であって」
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅん、仕事、ねぇ…?」
あああ!
悪戯心で出した言葉で気が付いたのだろう。勘のいい腕の主が傍若無人な幼馴染みに関して自分以上に心が狭い事を忘れていた。
「本当なんですぅ~!今までお正月は暗い内から起きてたから、初めてって考えてたら色々思い出して」
「色々?」
穏やかな口調ながらも冷気を含んだ声に冷や汗をかく。
「そそそそうです!よくよく考えると大嫌いだった敦賀さんを見直す切っ掛けになった言葉が天手鼓舞だったなぁと!」
「………新年一番に聞く俺に対する言葉が大嫌いか…」
あああぁああぁぁぁぁ!
「過去形です!!過去形!」
「凄く傷付いたな…今年一年忘れられそうにない…」
「今は自分でもどうかしてると思う程大好きですぅ~!」
涙声で叫んだ途端くるんと方向転換されたその先には、恋人のからかうような笑顔。
「じゃあ、思い出さないように毎日言って?」
「もう!本気で焦ったのに!どこからが演技なんですか!?」
「演技なんかじゃないよ?本当に面白くなかったし傷付いた。だから毎日言って?ああ、行動で示してくれてもいいな」

キョーコから誘ってくれるとか。

言葉の意味にぼふんと頭から水蒸気が上がる。
「お正月早々何を言ってるんですかーーーーーーー!」
「あれ?ナニを想像したのかな?」
「何って、名前で呼ぶのがどんな時か分かっている癖に…!敦賀さんのばか!」
「あ、また傷付いた」
わざとらしくキョーコの上に倒れ込んだ蓮が可愛いくて頬が緩む。

今年はこんな敦賀さんを、たくさん見れるといいな。

「明けましておめでとうございます。さ、もう起きましょう?新年早々だらけてると今年一年そんな年になっちゃいます」
悪戯を仕掛けた自分の手をぺちんと叩いて、ベッドから出たキョーコの背中を見ながら蓮は考える。

今年一年が今日で決まるなら

「やっぱり」
「はい?」
振り向いたキョーコに手招きすると、疑いもせず近付いた身体に腕を巻き付けてぐるんとベッドへ横たえた。
「ぎゃ!敦賀さん何を!」

主導権は握っておくべきだよね?

言葉の代わりににっこりと微笑んで、キョーコに深く口付けた。




テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2016/01/01(金) 08:30:23|
  2. 短編小説
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

犬も食わない

何で、こんな事になっているのかな?

心の中で、いや実際だらだらと冷や汗をかきながら社倖一は二人の間で身を縮ませる。
右には担当俳優である敦賀蓮が刺さるような笑顔で立っていて、左には彼の後輩であり恋人でもあるタレントの"京子"こと最上キョーコが営業スマイルで椅子に座っている。周りに人がいないのは、本能的に剣呑な空気を感じ取っての事だろう。
「何怒ってるの?」
「怒ってなんかいませんよ?」
「ちょっと頭が痛いだけなんです」
気持ちよく仕事が出来るようにするのがマネージャーの仕事だが、視線で人を殺せる担当俳優に聞く勇気はなく左側に声を潜めて聞いたつもりが右側からも返事が来た。
「体調悪いのか?」
「何か変かな?って程度で」
「隠す必要無いですよね」
今度は右側へ聞いたのに左側からも返事が来る。
「隠す?」
「ちゃんとしまった筈の体温計が無くて」
「計るまでも無いから気にしなくていいと思ったんですが」
「前科があるならちゃんと証明すべきかと」
「探してはみたんですが、どうしても見つからなくて」
「疑いたくは無いんですが」
「無理をするのが分かっているだけに
隠したんじゃないかと」
「素直に体調が悪いと言えば良いものを」
「ならいっそ黙っていた方がいいかもと」
「隠そうとしたらからすますます怪しくて」
「仕方ないとは思うんですが」
「「社さんはどう思いますか?」」
えええ~…それってつまり、お互いが相手を思った末の…ってか、俺に言ってた!?
両側からにっこりと微笑まれ、取り敢えずと口を開きかけた社と少し離れた場所で寝そべっているタレント犬の視線が合う。
呆れたような目をして大きな欠伸をすると足に頭を乗せる形でそっぽを向いたその姿に、そうだよな、と同意する。

俺がどうこう言う必要なんて、無いよな

「う~ん、そうだねぇ…」
周りの様子からすると二人の出番まであと少し。
短い間なら役者でなくても誤魔化せるだろうと考え込むふりをした。



テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2015/07/30(木) 21:23:34|
  2. 短編小説
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

彼の手

注意書き

このお話は『何故ヒール兄妹がヤンマガなのか』を考えた結果出来たお話なんですが。
病んで禍々しい話になりました。
読まれる方によっては嫌悪感を抱かれるかもしれません。
飽くまでもヒール兄妹であって、敦賀氏とキョーコちゃんではありません。
自己責任でお進み下さい。







続きを読む

テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2015/06/09(火) 17:36:19|
  2. 短編小説
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

チャンス到来

どうして

そう言いかけたキョーコの唇を遮ったその長い指の先の持ち主は、視線を横に向け耳をそばだて気配を窺っている。

こんな事に

なっているかは、彼の手首に窮屈そうにぶら下がる、飲み物が入っているだろう小さなビニール袋で想像できる。
多分彼は買い物をしにふらりと外に出て、当然ファンに見つかって、その逃避行に偶然居合わせた自分を巻き込んだのだろう。
でも、とキョーコは考える。
わざわざ外に買いに出なくても、事務所の中には自販機が幾つもあるしカフェテリアだってある。
それに
夕方の、行き交う人が多い時間に身を隠す事なく外に出ればこうなる事はいくら自分の立場に疎い彼でも分かる筈なのに。

ごめん

そう言おうとした蓮の頭を、探すファンの声にびくりとした彼女が慌てて手を伸ばし少しでも隠そうと肩へ引き寄せる。

自転車は?

なんて聞かなくても返事の予想が付く。きっと黄昏の空が綺麗で妖精さんが現れそうだからとか自転車で走り抜けるのは勿体ないとか。
だからって、と蓮は気付かれないように溜め息を付く。
日が長くなって今はまだ明るいが、下宿先に着く頃には暗くなってしまう。芸能人に見られない自信は持っても構わないが、女の子である自覚は持って欲しい。
でも
いくらメルヘン思考の彼女でも、この時間なら手伝いが出来ると急いで帰りそうなのに、何故遠い下宿先まで歩く事を選んだんだろう。

思ったより遅い事務所からの帰り
考えるより早く終わった仕事

自分に都合がいい想像だけど

私を追いかけてくれたとか
俺が帰って来るのを待っていたのかも

少し外れただけの路地なのに、大通りからの喧騒が遠い。
密着した身体が、熱い。
この状況に、何を言っていいのか分からない。

けれどもしかしたら

敦賀さんと一緒にいる時間を増やせる
最上さんの気持ちに少しでも近付ける

「「…あの」」

ーーーーーーーーーーチャンス到来









テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2015/05/26(火) 20:00:00|
  2. 短編小説
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
次のページ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。