六華(スキップビート二次小説)

スキビ小説が書きたくなって開きました。いつか雪のように無くなります

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言の葉の国 7

「お帰りなさいませ」
上リ口に正座し手を付き深く頭を下げたキョーコの姿に、蓮は引き戸に手を掛けたまま固まった。
「…三つ指付いて迎えてくれるなんて、奥さんみたいだね」
「謝っているんです!寝呆けてお仕事のお手伝いが出来なかった事への謝罪です !」
「ああ、そうなんだ。疲れていたんだから気にしなくていいのに」
「借りを作りたくないんです!で、どうでした?依頼人に会って来たんですよね?」
居間へと向かう蓮とは別に台所に立つ。
「お昼は食べましたか?」
「いや…いい。やっぱり女の怨みを買ってるね。後ろにべったり張り付かれていたよ」
女の、怨み。

ナゼ
ドウシテ

じわりと沸き起こる、闇。
あんな夢を見たせいだ。
「…本当に怨みなのかな…」
「どういう事?」
「いえ、怨みには間違いないんでしょうけど…原因によって…質が違うというか…」
「質?」

アナタハワタシノ

「…裏返し」
そう、それは
コーヒーを淹れようとかけたケトルのけたたましい音に、我に返って慌てて火を消す。
もう捨てた筈のそれが
その名を口にするのを待っている
「敦賀さん、源氏物語はお読みになりましたか?」
キョーコを飲み込もうと
心の
身体の何処かで
「一応…ああ、そういえばそんな話があったね。夫が通う相手を生き霊となって苦しめた末にって」
「何で相手なんでしょうね!?浮気した夫が悪いのに!」
口になんかしない。
私の気持ちは、そこから来てなんか、いない。
「…今回は男に向かったって事か」
「もう一人の自分を作っちゃうパワーがあるなら、それを他に向ければいいのに。仕事とか習い事とか、自分磨きに使って見返してやればいいのにって、そう思いませんか!?」
そう、だから、髪を切って染めてファッションにも気を使って、占いの道を極めて有名人になろうと
コーヒーを運んできたキョーコに礼をして、口にしようとした蓮がその手を止める。
「…それって、その間ずっとその男を想っているって事だよね」
うっすらと微笑を浮かべた唇から出た言葉に、息を詰める。
「聞き方によっては、男が戻って来るのを待っているようにも…ああ、それとも、自分から?」
家の何処かから、笑い声が聞こえた気がした。






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  1. 2015/05/30(土) 19:15:00|
  2. 言の葉の国
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言の葉の国 6

彼が女の子と話をしている姿を、遠くから見る。
此方に背を向けて立っていて顔も表情も分からないが、その雰囲気から二人が"友達"ではない事を物語っていて。
ちりちりと胸の奥が焼け付いて

ドウシテカノジョガトナリニイルノ?
アナタノコイビトハワタシデショウ?

風に舞った長い髪が、二人の姿を覆い隠して。



むくりと起き上がり、キョーコは周りを見渡す。
「…約束の時間って、何時?」
時計を確認すればもう昼が近く、訪問するには向かない時間。
静まり返った家の、軋んで音を立てる廊下を歩き居間に行くと片付けられた卓袱台にメモ。
『よく眠っているので一人で行きます』
…本当に?
台所には、洗われた二人分の食器。
…二人分。私とショ………
ばしんと両頬を思いっきり叩く。
「うん!目が覚めた!記憶が無いけど、ご飯はちゃんと食べたんだ。習慣って無意識でも出るってこの事?初めて体験した!あ、敦賀さんお昼には帰るのかな?作っておいた方がいいよね。夕飯の仕込みも今しちゃおう!鶏肉があるから唐揚げにして、サラダ作って、スープは…」
心に残る夢の記憶を追い払おうと傷む頬を撫でながら一人喋り続ける。
でないと心の奥底にある、暗い何かに囚われそうで。

…あんな夢を見るなんて。
京都出身の、東京に住んでいた二十歳の男の人なんて、沢山居るだろうに。





  


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  1. 2015/05/21(木) 10:30:30|
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言の葉の国 5

山が近いせいか、朝の空気が冷たい。
夏だから過ごしやすくていいけど冬は大変かもと思いながら卓袱台を拭く。
「おはよう。早いね」
「おはようございます。こんな朝早くから山に行っていたんですか?」
まだ眠っているとばかり思っていた家主が居間の掃き出しの窓、山に面した裏庭から姿を現してキョーコは聞く。
「うん…あ、朝食?ごめん、直ぐ行くから」
横切る蓮の一歩後ろ。
風景が霞んで見え目を擦る。
疲れてるのかな?
気力体力には自信があるけれど、この三日間は流石に許容範囲を越えているかもしれない。何時もならすっきりと起きる身体も、何処か重い。
食事を運ぶ為に居間から台所へと歩く廊下が、みしりと音を立てキョーコは足元をぼんやりと見た。
しっかりした造りのように見えたけど、やっぱり古い家なんだ。普段人が住んでいないから、余計傷みやすいのかもしれない…
「手伝おうか?」
「ではこれ持っていって下さい」
「うん」
盆を持った蓮は音も無く廊下を歩いて行く。
猫みたい。
いただきますと箸を取るが、妙に重く感じる。
「結構ボリュームあるね」
「ボリュームって…一般的な朝食ですよ?」
ご飯にお味噌汁、焼き鮭に野菜の浅漬け。
「お味噌汁だけで」
「駄目ですよ。朝はちゃんと食べないと。もしかして…朝はパンの方が食べやすい…とか」
「どちらかと言うと、そうかな」
「…今日帰りに買わないと…」
「そうだね…最上さん、まだ眠い?」
「はぁ…そうなのかな?」
蓮の声が遠くなっていく。視界が霞んでゆらゆらと揺れ、箸を持つ自分の手がぶれて見える。
「少し寝たら?行く時には起こすから」
「はい…すみません、こんな事初めて…で」
「大丈夫だよ。今だけだから」
「そうですね…」
疲れは
「…少し寝たら、とれ、ます…」
ぐらりと傾いた頭を、蓮が支える。
「いくらお腹が空いていたからって、意地汚くないか?」
しっかりとキョーコの手に握られた箸を見て、苦笑した。




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  1. 2015/02/21(土) 11:32:12|
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言の葉の国 4

山の中と言ってもいいような場所にぽつんと建つ古い小さな、なのに妙に存在感がある黒々とした家を前にこちらの方が何か出そうだという言葉を飲み込む。
「と、とっても赴きのある家ですねっ」
「はっきり言っていいよ?曾祖父が建てた家だからね。やっぱり何処か別の」
「鬼が居ようが蛇が居ようが大丈夫です!お邪魔します!」
ぺこりと家に挨拶して入れば閉めきった雨戸のせいで暗く空気が冷たい。
がたがた音を立てて蓮がそれを開けると日差しと共に新鮮な空気が入り込んで、キョーコは思わず深呼吸した。
「椿の手入れした方がいいんだけど…」
「椿?」
蓮の呟きに視線の先、庭の鬱蒼と繁る木々の間をよく見ると緑を更に濃くしているのは青々と繁る椿の生け垣。その向こうは山に続くらしく名も分からない木々が更に生い茂っているようだ。
「時間が無いなら庭師さんにでも頼んだら…」
「変に弄られると困るから、他の人の手を入れたくないんだ」
あちこち覗き込んで掃除道具一式を探し出した蓮は箒をキョーコに差し出しながら予定を伝える。
「依頼者の所へは明日行くから、今日は取り敢えずここを住めるようにして。定期的に人が入っているからそんなに困る事はないと思うけど…電気ガス水道は通るようにしたから、後で食事を買いに行こう」
「はい。あ、お布団は」
「確かこっちの押し入れに」
「干さないと。食器は使う前に洗えばいいかな…ええと冷蔵庫と洗濯機使えるか確認して…買い物リスト作らないと…あ、お水少し出しておいた方がいいかも。水道どこかな?」
箒を受けとる事なくふらりと台所を探しに行くキョーコに苦笑して、使い慣れない箒を動かす。
「お米に塩、お酒を沢山、白い餅と海の魚、川の魚、季節の野菜…」
「後は?」
「鴨肉」
「鴨は今からは手に入らないかも。鶏でいいかな」
「仕方ないな」
「ある程度先に買っておくべきだった」
「そうですよ!」
台所から顔を出したキョーコは不満気だ。
「食材どころか鍋もろくに無いじゃないですか!夕飯どころか昼食の用意も出来ませんよ!?」
「ごめん。久し振りで何があるかよく分かってなくて…食事、作ってくれるの?」
「街から離れているのに食事の為にいちいち出てたら時間の無駄です!取り敢えず部屋の掃除だけでも終わらせて買い出しに行きましょう!私がしますから敦賀さんはお布団干して下さい!」
何か主導権握られてる?
蓮から箒を取り上げててきぱき掃き出したキョーコの気迫に押されながら雑巾を持ち。
「……!ね、最上さん」
「何ですか?」
「君が俺に掛けた言葉の力…解いてくれるかな?」
一体何の事かと見た蓮は、足の小指を押さえて踞っている。
" 足の小指をぶつけちゃうとか大事なスーツに染みを付けちゃうとか "
「…どうするんですか?」
「許す言葉を心底から言って貰えれば」
心底から。
「私が受けた仕打ちを考えると自信が無いんですが」
「申し訳ありませんでした」
そのままの姿勢でぺこりと頭を下げた蓮に思わず笑う。
「いいですよ。その分しっかり面倒みて下さい」
「…はい」
安堵の溜め息を付いた蓮が立ち上がり布団を干すために縁側を拭き始めた。




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  1. 2014/09/14(日) 07:23:45|
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言の葉の国 3

本当に少しだけ眠った蓮は目を覚ますと食べ物と飲み物を買い再び車を走らせる。
「お仕事内容を聞いてないんですが」
サンドイッチを食べた後、ぺきりとペットボトルの蓋を開けながら聞くキョーコに
「決心着いたんだ」
と前を見たまま笑った。
「仕事が終われば繋がりはおしまいですよね!?」
「多分」
「だったら、ちゃっちゃと済ませちゃいます!」
余程自分が嫌いらしい。キョーコの身に起こった事を思い出し当たり前かと納得して、さて何処から話すべきかと考えを巡らせる。
「依頼者は母親でね。二十歳の息子の様子がおかしいのは何か憑いてるせいじゃないかと伝を辿って相談にきた」
「様子がおかしい?」
「こちら…東京で独り暮らしをしていたそうなんだけど、二ヶ月程前その息子がふらりと帰って来てそのまま部屋に閉じ籠ってしまったそうだ」
「はぁ」
「食事もまともに摂らない息子を心配した母親が思いきって部屋に入ると部屋中お札が貼られていて息子は布団にくるまって女が来ると怯えていて」
「へぇ~」
「よくよく聞くと、半年も前から夜な夜な女が現れて寝ている彼にのし掛かり恨み言を呟きながら首を絞めるらしい」
「ありがちな話ですね」
「うん、まぁ、そうなんだけど、本人は霊の仕業だと信じきっているし確かに首には指の形の痣が出来ている。自作自演にしてもやり過ぎで気休めになればと考えてお祓いをしたが効果が無くて」
「胡散臭い敦賀さんの所へ依頼が来たと」
「胡散臭い俺の所に来る位切羽詰まっているんだよ」
キョーコの言葉に笑う。
「女の怨みを買ったんだ。自覚があれば本人に心当たりが有るだろう。しかし相手が悪かったね」
「相手が悪い、ですか?それは?」
「詳しくは本人に直接会ってからだけど、どうも"力"を持っているみたいだ」
「で、私は何をすれば」
「必要な時に、必要だと思う言葉を言って貰えればいい」
「それだけですか?」
「うん」
「で、何処に向かっているんでしょう?」
「京都」
「ごふっ…!」
いきなりむせたキョーコに驚いて慌ててハンドルを握る手の片方を離し背中を擦る。
「ちょ、大丈夫!?」
「だ、大丈夫、です。ところでお泊まりはどちらに…」
「亡くなった祖父の家がまだ残っているからそこで…あ、最上さんはホテルか旅館に」
「そこまで甘えるつもりはないのでご一緒で構いません!」
「そ、そう?ならいいけど…」
妙に力の入るキョーコと戸惑う蓮を乗せた車は京都へと入った。




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  1. 2014/07/30(水) 17:48:43|
  2. 言の葉の国
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