六華(スキップビート二次小説)

スキビ小説が書きたくなって開きました。いつか雪のように無くなります

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きらきらひかる 27

食事に誘っても何処が良いかなんて分からない俺の相談相手は、一人しかいない。
気恥ずかしさを堪えて聞いた俺に社さんは目を見張った後、嬉しそうに笑った。
「任せておけ。女の子なら絶対喜ぶ店を予約しておくよ…ああでも、保津周平の姿で入れない店は駄目だな」
「…いえ」
不安が無いといえば嘘になる。
でも俺の全てを受けとめて、慣れない"本当の名前"を必死に呼ぼうとする彼女に甘えたままでいるのは酷く格好悪いと思った。

だから

「敦賀蓮で行きますから、大丈夫です」


俺は
最上さんの気持ちに応えたいと



涙で潤んだ瞳はねっとりとした熱を含んで
紅い唇が媚びるように歪む
自分が女である事を見せ付ける
大きく開いた胸元
吐き気がする程の嫌悪感
瞬きさえ許されない張り詰めた空気
何かが起こりそうな予感に
身体が冷えていくのが分かる

…違う

この後
何が起きたか
俺は知っている

…何が起きた?


ヒールの耳障りな音に
思考が遮断され

恐怖に支配されて

逃げなければ

そう思うのに身体が動かない
動かせない

そう

敦賀蓮は

動く事も

考える事も

許されない

誰かの気持ちに応える事も

だから

俺は



『ちゃんと考えて行動しないと本当に段ボールの家になっちゃいますよ?』
「敦賀さん!」
呼ぶ声と共に急激に広がる視界
遠ざかる女
流れる世界の中、俺の手を引いていたのは
 どんな姿をしていても
 俺を見つけ、笑う
 あやふやでも俺には変わり無いと
 俺が全て忘れてしまっても
 私が教えてあげると
 俺の側にずっといると
『誰よりも好きで誰よりも一緒にいたい人』
 そう言ってくれた
 そう思った、唯一の彼女
俺の、恋人
「も、がみ…さん」
「海の代わりに何処か連れていって下さい!うんと遠くがいいです!」
俺の腕を引きエレベーターへと向かいながら必死に喋り続ける声が震えている。
「最上さん」
「いっぱい、いっぱい楽しい事しましょう!」
だから、私を忘れないで
明るく、優しく俺の未来を縛ろうとする約束がそう聞こえて
乗り込んだエレベーターのドアが閉まると同時に抱き締めた。
「うん、紅葉も、雪も、桜も一緒に見よう。最上さんの行きたい場所に一緒に行こう。毎年新しい年を一緒に迎えて、誕生日にはローソクを一本ずつ増やそう」
「…私のだけじゃ駄目です…敦賀さんの行きたい場所にも連れて行って下さい」
「俺の?」
「敦賀さんが行きたい場所に連れて行って下さい。見たい景色を、私も見たいんです…だから」
「約束する…必ず守るから」
「絶対、ですよっ」
離さないとばかりに俺の背中に手を回し、強く抱き締め返してくれる恋人が愛おしい。
「うん、絶対」
軽い振動と共にエレベーターが止まり動いていた事に気が付いた途端、最上さんが腕の中から飛び退き見る間に真っ赤になって慌てて乗り込んで来た人に背を向ける。
露になった項から背中まで赤く染まっていて、その艶やかさから目が離せない。
「わたっ、いま、公共の場で何を、おまけに大声で名前を呼んで」
「…うん」
保津周平で呼ばれたら、きっともう二度と敦賀蓮で…本当の自分でいられなかった。
「呼ばなければ別人で通せたのにっ、私困らせただけでっ」
「うん…ありがとう」
「もう、何がどう"ありがとう"なんですか!?」
俺を真っ直ぐに見上げた、恥ずかしさから潤む瞳
何時も明るい方向へと導いてくれる言葉を紡ぐ、淡く色付く唇…
「…………………!」
甘く柔らかな感触に我慢出来ずに二度、三度。
同乗者に視線を向ければ、此方に背を向けている。
「大丈夫、見ていないから」
呆然とする最上さんの手を握り前を見れば、ガラス越しの、闇に沈もうとする世界に溶けそうな自分の姿。

あの女に怯え続け
最上さんを不安にさせる
俺が望んだ"これから"は、そんな物じゃない
…強い心が欲しい
最上さんと一緒に居るために、もっと確かな世界を手に入れるために
あの女が現れても、全てを思い出しても揺るがない強い心が

俺は
何時までも保津周平の影に隠れていてはいけないんだ







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テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2016/07/24(日) 22:50:57|
  2. きらきらひかる
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きらきらひかる 26

大学で会った、話すのを憚るような内容を何でも知っているとばかりに自慢気に、そして嬉しげに話すあの人のぎらついた目が浮かぶ。
確かに側に居たいとは思う。
何があったか知りたくないと言えば嘘になる。
でも
"愛しているなら分かるよね?"
だからと全て許されるとは思わない。
そう
愛しているからなんて理由で痛みさえ忘れてしまう程の傷に触れてはいけない
なのに
敦賀さんの言う"あの女"は何時までも影のように付きまとい、抉ろうとする。
痛みを与える事で自分の存在を忘れさせまいと
何時までも自分に縛り付けようと
そして
全てを奪って、自分だけの"敦賀蓮"にしようとしている
「海の代わりに何処か連れていって下さい!うんと遠くがいいです!ええと、そう京都!京都がいいです!秋になったら紅葉を見に行きましょう!冬になったら長野にスキーしに行きたいです!ああ、北海道の雪まつりもいいですね!春になったら桜!お花見しましょう!モー子さんや敦賀さんのマネージャーさんを誘って、みんなでどんちゃん騒ぎしましょう!そして夏になったら海に連れていって下さい!」
楽しい事を沢山して、あの人が誰か、何があったか考える暇なんて無い位未来の事で、約束で一杯にして

私ではなく、その人を忘れてしまえばいい

ただそれだけを考えていた
「いっぱい、いっぱい楽しい事しましょう!お正月にバレンタインに雛祭り、こどもの日もクリスマスも年越しもみんなでしましょう!」
少しでもその人から離れたくて
その人から敦賀さんを離したくて
固まったままの敦賀さんをエレベーターへ強引に連れていき開いたドアの向こうへ押し込んだ。
「あ、クリスマスは私の誕生日なんですよ!敦賀さんの誕生日は何時ですか!?私ケーキ焼きます!料理はちょっと得意なんです!チョコレートでも抹茶でも生クリームでも、敦賀さんの食べたいケーキを作りますよ!年の数だけロウソク立てて、みんなでお祝いしましょう!約束ですよ!?全部、敦賀さんが居ないと駄目なんです!覚えてて下さいよ!?」
まだ足りない。
もっと、もっと沢山
そう思うのに思い付かなくて言葉が切れてしまったその瞬間。

敦賀さんに抱き締められた。



テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2016/06/26(日) 12:04:25|
  2. きらきらひかる
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きらきらひかる 25

刻々と迫る約束の時間に、気持ちは落ち着くどころかどんどん焦ってくる。
ど、どうしよう…心の準備が出来てない
ずっと保津…敦賀さんの体調を気にする事で忘れようとしていた出来事を、夕方来た連絡に…何処か甘く聞こえる声に改めて、ありありと思い出してしまった。
てててて、手の、この手のここに!保津さん、いや敦賀さんがひぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁ!
恋人ならあれが普通なの!? 保津さんは恥ずかしく無いの!?何であんな事出来ちゃうの!?あああそうだ!きっと勢い!あの時"ちょっと"どころか"だいぶ"気にした格好してたから仕事帰りにそのまま来たに違いない!うんまだお仕事モードだったせいよ! 今から来るのは何時もの格好!何時もの保津さん!そうもう二度と無いから私落ち着いて!
「最上さん?」
掛けられた声に反射的に振り向いて、驚きのあまり動揺も混乱もすとんと抜けてしまった。
「………どうして?」
あの時とは違って、まだ人目の多い時間なのに
予想の、"だいぶ"どころか雑誌で見たままの"敦賀蓮"が少し困った様に微笑む。
「どうしてって…何時もの格好では入れないから」
そうでした。ここ、待ち合わせ場所は"ちょっと"どころか"だいぶ"いいホテルのロビーでしたね。その事も、普段の格好では入る前に止められる事も忘れてました。でも保津さ…敦賀さん、あんなに人目を気にしてたのに。
"このままでは駄目だと分かってる"
もしかして、凄く無理をしてるんじゃ。
「…おうち御飯にしますか?」
「それは…せっかく社さん…マネージャーが取ってくれたし」
マネージャー?そんな肩書きが付く人が居るなんて、もしかして本業は学生じゃなくてモデル?
呆然としたままの私にちょっと慌てて答えた保、敦賀さんが今気づいたとばかり目を見張る。
「ワンピース…」
「え?あ…はい。どう、ですか?」
保津さんが買ってくれたワンピース。着てみたら思ったより背中が開いていて恥ずかしいし、ちょっと季節外れの気もするけどこの機会に着なければ一生着れない気がした。
「…冷房がかなり効いてるけど、上着は?持っているなら着た方がいい…風邪を引くよ」
くるんと回って見せた直ぐ後の言葉に、がっくりしてしまう。可愛いと言って欲しい訳ではないけど、似合う位は言って欲しかった…ああ、そうか、似合ってないんだ。
「やっぱり帰って」
「行こう。ここのレストラン、夜景が綺麗なんだって」
妙に頑なな………敦賀さんが私から上着を取り肩に掛けると、手を取ってエレベーターへと歩き出す。
「ここのレストランって、もしかして、味も値段も素敵だと有名な」
「そうなんだ」
「そうなんだって、もう!ちゃんと考えて行動しないと段ボールのお家になっちゃいますよって言ったじゃないですか!」
「そこの支払いに困ら」
言葉と足を急に止めた保津さんが、一点を凝視したまま顔色を変えていく。
「…保津さん?」
「……………あの女」
あの女?
普段無い乱暴な言葉使い、冷たくなっていく手…消えた表情。
まさか
"当時の女マネージャーが目の前で"
亡くなったとばかり思っていたけど、もし生きていたの?
「保津さん…保津さん!」
保津さんの視線の先に居る何人かの女の人は皆"敦賀蓮"を見ていて私には誰か分からない…分かる筈も無い。
"恋愛の縺れ"
声も顔も知らないその人は、そうする事で敦賀さんを縛り付けたんだ。
一生離さないと
忘れさせないと
自分だけを想って生きていけばいいと

記憶を
私を忘れても、その人は覚えているの?

「………っ、敦賀さん!」

そんなの、許さない。







テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2016/04/06(水) 10:55:16|
  2. きらきらひかる
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きらきらひかる 24

最上さんの真っ赤になって驚いた表情が、そのまま顔色を変えていく。
「ほ、保津さん?今ついでみたいに言ってましたけど…わざわざ姿や名前を変えてまで隠していた重大な事なんじゃ」
「最上さんには知って欲しいんだ」
今なら、矛盾の答えが分かる。
俺は綻びを作り続けていたんだ
気配を、息を殺して、忘れてしまった何かに怯え、繋がる全てを忘れる事でもう一人の自分を切り捨てながら確かな世界に生きたいと願って
そんな俺に気付いてくれる誰かを、あやふやな世界から出してくれる誰かを探して
「誰よりも俺を知っていて欲しい」
そしてやっと出会えた君は
怒りながら確かな世界へと連れ出して
笑いながらそのままでいいとも言ってくれて
「どうしよう」
「え?」
「だって本当は敦賀さんって呼ぶべきなんでしょう?でもずっと保津さんって呼んでたからいきなりは変えれないです。あ、でも大学では保津さんと呼ばないと…じゃあ誰も居ない時は敦賀さん?あああ絶対、何時か何処かで失敗しちゃう!」
こうしてあやふやな世界さえも確かな物にしてしまう。
「…最上さんに出会えて良かった」
「へ?」
「好きになってくれて、ありがとう」
「あの、保津、るがっさん?」
「俺も君が好きだ」
「ひぇっ!?」
「心から愛してる」
「ややや止めて下さい!もう、こんな所で!」
どれだけ言葉を尽くしても足りない。
まだ伝え足りない。
「今日一緒に食事しよう…連絡するから待ってて」
「…今日はアルバイトで遅くなるって言ってたじゃないですか」
「出来るだけ早く終わらせるよ…少しでも一緒に居たいんだ」
繋いだ手の指を絡め持ち上げて、手の甲にキスをする。
もっとこの気持ちを伝える術がある筈…
何時もなら力で振り切って逃げそうな彼女が恥ずかしがり俯いて、ただされるがままになっていて、その露になった白く細いうなじから目が離せなくなる

……………駄目だ

良くない方向へ変わりかけた自分に首を振ると、その仕草に気付いた彼女が顔を上げた。
「疲れましたか?」
「…いや」
「そう言えば、ほ、づ、敦賀さん、寝てないんじゃ」
「………………………………………少し寝たから大丈夫」
「何ですかその間は!やっぱり寝て無いんでしょう!今日何時からですか!?」
「…8時」
「早いですね…今から直ぐ帰ってお布団に…って、まだ電車が動いてる時間じゃ…あ!私の部屋で休んでいって下さい!移動しない分寝れます!」
まだ離れたくない無いとは思う
でも今良くない自分を振り切ったばかりの俺には、彼女が名案とばかりに明るい表情で告げた言葉は強烈過ぎて目眩を起こしそうになった。
自分が何を言っているか分かっているのか?いや君は純粋な意味で言ったのは分かっているけど…こんな時間に男を部屋に入れて二人きりになるなんて、君は自分が女の子だと分かっているのか?俺は最上さんが思うような安全な男では無いんだ…と、自分も今気付いたばかりだけど…その前に君は俺の事本当に男として見て
「…………ははっ」
あの女の事も忘れて最上さんの事ばかり考えていた自分に気が付いて、笑いが止まらなくなる。
「保津さん?…じゃなくて、敦賀さん?」
そう、あの女が誰か、忘れた過去に何があったかなんて必要無い。
君と一緒に居る為に、自分は何をすべきか、どうすればいいのかを考える事が大切で必要な事なんだ。







テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2016/03/12(土) 11:58:21|
  2. きらきらひかる
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きらきらひかる 23

もしかしたらが頭から離れなくて、振り払う為に寝返りを何度も打つ。
「う~……いっそ散歩にでも行こうなか…うん、そうしよう!」
どんどん暗くなっていく思考に歯止めを掛けなければ。
即決してベッドから出て着替えて音を立てないように、でも勢いよく開けたドアが何かにぶつかって慌てて覗いた先に保津さんがいた。
「え?やだ保津さん!?大丈夫ですか!?」
強かに打ってしまっただろう額を押さえながら、どうした?と聞かれて貴方の事が気になって眠れなかったと言えない私の誤魔化しに気付いているのかいないのか、誘いに乗る彼に後ろめたさよりも会えた嬉しさが先に来る私はやっぱり自分勝手な女なんだと思う。
「な、何故突然会いたくなったんですか?」
「…何かあったみたいで、それに気付いたら最上さんにどうしても会いたくなった」
「みたい?」
「でも覚えていないんだ…このままではいけないのは、分かってはいるんだけど…」
まだ日が登る前。手を繋ぎ声を潜めて話す私達の距離を、全てが眠っている時間が更に近くする。
「…このままで、いいんじゃないですか?保津さんは保津さんに変わり無いんですから」
そう、過去何があったとしても関係無い。信じればいいんだ。
私の事をちゃんと覚えていてくれる保津さんを。
私に本当の自分を見せてくれているだろう保津さんを
私が好きになった、私を好きになってくれた保津さんを
「…大学に入る前の記憶が抜け落ちているどころか、それ以前の記憶さえ曖昧で確かな物なん持っていないんだよ?」
「これから持てばいいだけです」
「…また忘れてしまうかも」
「私が代わりに覚えておきます」
そう、私が側にいて覚えていればいい。
「もし保津さんが全部忘れちゃったら、私が思い出せるよう何度でも全部教えてあげますよ。ちゃんと脳に栄養がいくようにご飯食べながら」
「また蹴っ飛ばす?」
「この辺り、弁慶の向こう脛が凄く痛いんですよね」
私を忘れた復讐だから、その位は許してもらわなくちゃ。
「知ってました?直ぐ思い出せるよう教えときましょうか?」
「…その前に、ちゃんと伝えておかないと」
「何を?」
「最上さんが好きだと言う事」
「なっ」
初めて伝えて貰った言葉に、顔が赤くなるのが分かった。
「それから、俺の名前は本当は敦賀蓮だという事。仕事はモデルだという事も」



テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2015/12/08(火) 12:23:09|
  2. きらきらひかる
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