六華(スキップビート二次小説)

スキビ小説が書きたくなって開きました。いつか雪のように無くなります

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捧げ物:恋心

新幹線の窓から見えた低く厚い雲は今、冷たい幕を垂らし世界を薄暗く覆っている。

「どうしたの?」
何故ここに居るかではなく、何故様子がおかしいのかを聞きたげに、不思議そうに声をかけたのは…片想いの人。
キョーコは、はた、と足を止めゆっくりと蓮を見た。
振り返ってはいけない。そう思うのに。
ロケ先を訊ねたものの、何か用事があったわけではない。
・・・ただ、姿を見たかっただけ。
たった二日。たった二日会えなかっただけなのに気が付けば彼の元へと向かっていた。
・・・そんなこと、言えない。
「最上さん?」
近寄ってくる大きな人。
翳している大きな傘が、キョーコとの間を遮る幕を一枚一枚開いていく。
心配そうにキョーコを見るその整った顔立ちが、黒い瞳が、だんだんとハッキリと目に映り。
もう、隔てる物は何も無い…

ぽつん

蓮の傘から、キョーコの傘に落ちた雫の音が、全てを忘れさせた。
「・・・・暖めて下さい。」
何もかもを捨てて彼を求めてしまった自分が怖くて、指先から冷えて震える身体を、心を、何時かのようにその腕の中で暖めて欲しかった。
「…どうして、欲しいの?」
その言葉に我に返ったキョーコの顔がかっと朱に染まる。傘が影を落としている蓮の顔は無表情で。
「上着を貸して欲しいの?何処か濡れない場所へ連れて行って欲しいの?それとも…抱いて欲しいの?」
答えられる筈がない。
想い人がいながらも幸せになる資格がないと、寂しげに笑った彼の側に居るためにこの気持ちを隠し通そうと決めたのだから。
そして…
呆然と立ち竦むキョーコに、更に蓮が問う。
「ね…どうして欲しいの?」
さぁ、と、二人の間を幕が風に流されはためく。
「俺は、もう最上さんにその場限りの温もりをあげる事は出来ないんだよ」
彼が迷いを捨てたなら、もうその腕の中に自分を入れてくれない。
きゅ、と噛んだ唇が…心が、痛い。どう繕えば彼の側に居られるのだろう…
「だからといって他の誰かがそれを与える事を許さない、我が儘な男だ」
「…え?」
「そして…嫌われるのが怖くて自分から動けない、臆病な男だ」 
一体彼は何を言っているのだろう?
探ろうとしたキョーコの視線を遮るように、蓮は顔を斜め下へ背ける。
「なのに、俺から逃げないように君を絡め捕らえようとする、狡い男なんだよ…」
私を、捕らえる?
どくんと、心臓がなる。
ゆっくりと顔を上げた蓮の瞳が、揺らぎながらも熱を持ってキョーコを見る。
「君を抱いたらもう、離してあげる事は出来ないんだ。だから…この先は最上さんに決めて欲しい。俺に、どうして、欲しいの?」
…恋心というには熱すぎる想いに、戸惑っているのは私だけではなかった…
「…抱いて、暖めて、ください。ずっと…」
もう、戻れない…戻れなくて、いい
先に動いたのはどちらか。
終わりと始まりを告げる幕は、二人と落ちた傘を静かに濡らし続けた。
              


              終

moka さん一周年おめでとうございます~!ヘタ蓮でお祝い申し上げます(笑)








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テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2014/10/28(火) 17:19:12|
  2. 捧げもの
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捧げ物:笑う愚者

ベットから出ようと足を下ろした蓮は、左足親指の爪が色付いている事に気が付いた。

この色は

紛れもなく自分がミラノのお土産に渡した彼女の色で。
腕の中で眠る彼女をずっと見つめていたいと思いつつ意識が遠のいたのは朝方で、おまけに最近は彼女の気配さえあれば激しく雷が鳴ろうとも大きな地震があろうとも…実際にはまだ無いが…ぐっすりと熟睡してしまうのだ。
そんな眠りの中で悪戯されたんだろう。恋人の独占欲を表しているようでいっそ全部塗ってくれればと思うが慎ましやかなあの性格からそうは思っても爪の一つが精一杯だったのだろうと考える。
彼女の事だから自分のスケジュールはしっかり把握していて今日ならばと仕掛けたに違いない。その彼女は既に出掛けた後で。
仕返しをしなくては。
頭の中でざっと今日の仕事内容を確認した蓮はくすりと笑った。

街中の大きな大きなアルマンディのポスターの前でキョーコは叫び声を上げそうになった口を慌てて手で覆った。
勿論その爪には彼が選んでくれた自分の色が塗られていて。それを確認すると恐る恐るもう一度仰ぎ見た。
ポスターの中の彼はオフィスに居るにも関わらずスーツの上着を肩に掛けてネクタイを解くどころかシャツのボタンまで外していて。あり得ない事に靴も靴下も脱いで大きく重厚な机の上にどっかりと腰を下ろし足を組んで書類に目を通している。
やや斜め上方から撮られたそれには美しい素足がしっかりがっつり写っていて。
自分の悪戯もしっかりがっつり写っていた。
おかしい。何がおかしいって全てが。
確かにあの日アルマンディの撮影がある事は知っていた。それが新作のスーツの撮影で、どこぞの大きくて立派な会社のオフィスを借りてする事も。
確かに三枚の内他のモデルと写っている二枚はばりっときっちりスーツを着ていて如何にも仕事してますと写っている。しかしこの彼一人が写っているポスターが。
こんな筈では。
駄目でしょうオフィスでしかも仕事中にそんな格好しちゃ社長に見つかったら肩叩かれちゃいますよっていやいや敦賀さん今回は堅いイメージの仕事だって言ってませんでしたっけなのに何でこんな色気たっぷりのいやいやそれより。
すっかりパニックになったキョーコは鞄から携帯を取り出すと発信履歴の一番上を押した。

言葉にならない声を聞き蓮は声をあげて笑った。
仕返し成功。
キョーコには言っていなかったがアルマンディの本社から広報担当者が来る事になっていたのだ。遊び心を充分に知っている彼の前で蓮はわざと靴下を脱いだ。
ちらりと確認した彼はにやりと笑うとこれまたわざとらしく連れて来たスタイリストをひざまづかせ。こうして出来上がったのが"仕事もプライベートも充実した男が着るスーツ"とい今の蓮にぴったりのポスターという訳だ。
「何時ものサインだよ?」
いや違うあれは悪戯で大体サインはこっそり誰にも気付かれないようにするものでと携帯から流れる声を聞きながら確かもう量が少なかった筈だと考える。
改めて何かプレゼントしよう。そう、彼女が自分に悪戯を仕掛けるような。

そして堂々とその仕返しができるような。






テーマ:二次創作小説 - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2014/05/10(土) 08:09:34|
  2. 捧げもの
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